カーリング観るなら「FESRAIN」を見る!(その5)

カーリング観るなら「FESRAIN」を見る!(その5)

YouTubeチャンネルにアップロードした「カーリング観るなら、“FESRAIN”を見る!」⑤-1から3の統合版「スチールを狙う時」です。

カーリング編④ではカーリングのエンドプランについて学びました。

今回も、2002年にアメリカ・ソルトレークシティで開催された第19回オリンピック冬季競技大会に、カーリングの日本代表として出場された松沢美香さんに、カーリングの試合で「スチール」を狙う状況について教えていただきました。

カーリング選手がどのように考えて競技をしているのかがわかってくると思います。

パート⑤-1 スチールのリスク

必ずスチールをしなきゃいけない場面っていうのが試合の中で出てくるんですけど。まず一つ目は大量に点差がついている時ですね。しっかり点差を追いつけなきゃいけないので。もちろん後攻の時に複数点を取っていくっていうのは大事なんですけれども、先攻でもどうしても点数を取らないと10エンド目まで戦いきれないよっていう場合は、スチールを確実に狙う場面っていうのが時々起こります。

ただどうしてもここで考えなきゃいけないのが、どうしても1点が欲しいがために、あまりにも相手の石が残り過ぎてると、自分たちの石をどうにか出されちゃって、最終的にさらにまた点差を離されて、もうゲームオーバーになるっていう展開がよくあるので、スチールをしに行く時っていうのは、リスクを管理しなきゃいけないっていう展開が大事です。

基本的に先攻は本当は(相手に)1点をあげる展開っていうのをしたいので、そこまで攻めなくてもいいんですよね。リスクをそこまで背負わなくても(相手に)1点をあげる形っていうのが理想なんですが、ただしリスクを負わなきゃいけないけど点数を取らなきゃいけない展開。じゃあそのリスクがどのくらいなのか。どのくらいのリスクを冒しても絶対に点数を取りたいのか。

いやいやまだ(試合の)前半のうちだから点差(は)もちろん追いつきたいんだけど、ちょっとまだ(リスクを負うのは)無理そうだねっていう時は、じゃあ相手に点数を取られない形を作っていくっていうことも、ケアしながら(試合を)進めていかなければいけません。どこかでちょっともうスチール(は)難しそうだなってなったら、もう迷わず相手の大量得点を減らしにいくような作戦に切り替えるっていうこともしていかなければいけません。

ただこれが(試合の)後半になってくると、どうしても絶対にもうスチールしないと(相手に)追いつけない、(残りの)エンド数が足りないよっていうパターンの時は、相手の石が残っているけれども、自分たちがスチールするために、相手の石を利用して自分たちがNo.1を取って、しかも出されない形を作るっていうのが大事になってきます。

ただし(相手の)石がすごく残っているので、こうなった時に相手がすごく上手に、例えばこういう風に黄色(の石)だけパーンって抜けちゃったみたいなことになってくると、(相手に)大量得点をやられてしまうっていうリスクもあります。ゲームプランは(今)何エンド目なのかっていうのを考えると、じゃあここで無理したほうがいいのか、しないほうがいいのかっていうので、ショットの選択が決まってくると思います。

パート⑤-2 スチールの「狙い方」

スチールを狙うにはやはりセンターガードが必要になっていきます。

このセンターガードの位置も、よく曲がるアイスですと、ハウスに近いガードでも(石が)しっかりと裏に曲がっていくので、(ハウスに)近いガードでも十分ハウスの中の石をしっかり隠すことができるのですが、あまり曲がりのないアイスだと隠れ切らない場合があります。(ガードの)ぎりぎり(を)通ってもあまり隠れない。

そういう時はですね、少し遠めのガードを置くっていうのが大事になってきます。遠めのガードを置いて(投げた石の)曲がりを待ってしっかり隠す。ガードの位置ですね。ガードの高さを考えながら、(ガードを)どこに置くかを選択しなければいけません。

じゃあそのガードをですね、置きます。センターライン上に2つですね。1個だけしかガードがないと1回出されちゃうと、もう何もない状態なので、ノーティックルールをしっかり使って2つ(のガード)ダブルセンターガードを置いていきたいんですけれども。

このダブルセンターガードも後々ですね、ノーティックルールが無くなってしまうと、センターラインにかかっててもテイクアウトしていい石になってくるので、そうなった時に(2つの)ガードの位置が近過ぎると、ダブルテイクアウトというのが実は簡単にできてしまいます。こんな風にですね。

こうなってしまうといっぺんに2つ大事なセンターガードが出されてしまうので、ダブルセンターガードを置くときは、離しておくというのが基本になります。離す事によって1回で(ガードを)2つ出すっていうのがすごく難しいです。

じゃあこのガードをしっかり置けた状態で、いつじゃあスチールしに行くのかっていうところなんですが、ガードを置き続けるのもサードの1投目辺りくらいまで。サードの2投目くらいになったら、もう近いガードでもいい。とにかくガードの裏にしっかり隠すっていうのが大事になってきます。しっかり隠す事によって相手のミスを誘いやすい形っていうのができてくるので。ちょっとでも(ガードの裏の石が)見えていると、相手は絶対にテイクアウトしてくるので、しっかり(ガードの裏に)隠すことを前提に、相手のミスをいかに誘うかっていう形を作っていくのが目標となります。

相手が先に(ハウス内に石を)入れてきたら、(エンドの)早い段階だと(相手の石に)つけにいっても悪くないよね。出されない石をまず作るっていう形ですね。出されない石を作っておいて。さあこのセンターガードを(ずっと)置いていたんじゃあ、実際相手のNo.1の石がそのままなので。じゃあどこでこれを動かすかっていう選択になってくると、やはりサードの2投目、スキップの1投目辺りで、しっかりと相手の石を動かして、自分たちがNo.1になっておくっていう展開を作らなきゃいけない。

(相手の石を)出し切らなくてもいいです。(相手の石を)出し切らなくてもいいので、自分の石を残しつつ、相手の石をバックガードとして使えるような位置まで相手の石を押し下げる事によって、相手がですね、こういう風に、本当だったらこうしたかったショットかもしれないけれども、相手のミスで自分たちの石に引っ掛けてくれるかもしれない。早いうちにこれをやってしまうと、例えばもうセンターガードが出されて、何もできない状態っていうのが起こってくる。

(そんな状況に)なってしまうので、あえてエンドの後ろの方でやる事によって、相手としてはですねセンターガードを外すよりも、この石を今度ケアしなきゃいけない。むしろ自分たちもまたNo.1を取りにいかないと相手にスチールされてしまうっていう展開になっていくので、そうなるのを防ぐためにエンドの後半の方で相手の石を動かす展開ですね。それまでこの形をいかにキープできるかっていうのが大事になってきます。

パート⑤-3 8エンド目が先攻の場合

スチールのパターンとしては一つ目は点差がかなり離れていて追いつかなきゃいけないっていう場合と、あともう一つが8エンド目に先攻の場合は、9エンド目先攻、10エンド目後攻。10エンド目(に)後攻を持つために8エンド目に得点をしておくと、9エンド目に相手に1点をあげて、10エンド目に後攻を持てるっていう考え方になるので、無理せずにスチールできるような場合は、8エンドでスチールに行って、9エンド目に相手に1点をあげて、10エンド目(に)後攻をもらうっていうような考え方をする場合もあります。

ただここで絶対に無理をしてはいけないので、できそうな時にスチール(をする)。スチールはもちろん仕掛けてスチールするっていう場合ももちろんあるんですけれども。

例えばこんな形で8エンド目にスチールに行くには、もちろんここにこういう風につけに行くっていうのが有効的かもしれないんですが。これははっきり言って無理してスチールをしに行っています。なぜかというとこれミスしたら、相手に簡単に2点あげてしまう展開です。こんなスチールの仕方は全くしなくてもいいので。

例えばですねこんな展開の時に、じゃあ最後の1投で。相手これ1点。私たち(の石が)No.2。相手(の石が)No.3なので、相手が複数点取るっていうのもなかなか(難しい)。多分どこかからダブルテイクアウトとかしなきゃいけないんですけれども。

じゃあ例えばこういう風にガードに行って。こっちからダブル(テイクアウト)されたりっていうパターンがあるのであれば、しっかり攻めて、こんな風に、ガードがいっぱいある。出されにくい。バックガードもある。こんな風に1点をしっかり取りに行く。これはそんなに悪くないスチールの方法ですね。

となると8エンド目に点数を取ったので、9エンド目(が)先攻ですが相手に1点を取らせる展開を作って、10エンド目に後攻を持つっていう流れができると非常にいいです。絶対的に(点を)取りに行きたいけど、絶対的に危険は冒さないので。(スチール)できそうな時(だけ狙う)っていうのが大前提ですね。

ちょっとでもミスしたら(相手が)2点とかになっちゃうっていうんだったら、そんなにグイグイは(スチールをしに)いかないです。無理をしない。相手に複数点(を取られる可能性)がない展開が作れるんであれば、こんな風にスチールを狙いに行く。

ただこの選択をするのもスキップの本当の最後の2投だったり。この場合に関しても最後の1投でスチールできそうだったらじゃあスチールに行くっていう選択をしたまでで、最初からスチールを狙いに行く場面ではないんですが、可能性として8エンド目に点数を取るっていうことは、1点でも悪くない。スチールできるんだったらスチールしておこうっていう考え方もできます。

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