カーリング観るなら「FESRAIN」を見る!(その4)

カーリング観るなら「FESRAIN」を見る!(その4)

YouTubeチャンネルにアップロードした「カーリング観るなら、“FESRAIN”を見る!」④-1から5までの統合版「エンドプラン」です。

カーリング編③ではカーリング特有の「FESRAIN」について学びました。

今回も、2002年にアメリカ・ソルトレークシティで開催された第19回オリンピック冬季競技大会に、カーリングの日本代表として出場された松沢美香さんに、カーリングのエンドプランについて教えていただきました。

カーリング選手がどのように考えて競技をしているのかがわかってくると思います。

パート④−1 先攻のエンドプラン

ではまず先攻の場合。先攻はセンターガードを用いることによって、最後相手のラストショットをさせにくい展開を作っていくというのが基本的な考え方になります。

フリーガードゾーン(FGZ)ルールに則ると、ハウスに入らない石は相手チームはテイクアウトしてはいけませんっていうルール、FGZルールがあるんですけれども、さらにそれがトライアル期間ということで、ノーティックルールというのが新たに今試行されています(注:撮影時点では試行ルールでしたが、2023-2024シーズンから正式ルールとなりました)。センターラインに少しでもかかっているセンターガードは動かすことは絶対にしてはいけませんっていうルールになってます。

なので(そのセンターガードに)触れてはいけないっていうことは例えばノーティックじゃない時はこんな風に、アウトにしなければ(センターガードを)動かすことが可能でしたが、今ノーティックルールはセンターラインに触れているガードは動かしてはいけません。必然的に(センター付近に)ガードが残る形っていうのが作りやすくなりました。

ガードが常にある状態で(試合が)進んでいくことが多くなるので、後攻が少し点数をとりにくくなる、先攻がスチールしやすい展開っていうのが作りやすくなりました。

ではこの先攻の攻め方としてはですね。基本的なゲームプランとして、相手に1点を取らせるっていうのが先攻の目的なので、ハウスの中心の方に自分たちの石がある状態、ハウスの中心に自分たちの石がたくさんあると、相手が得点できる範囲というのがすごく狭くなります。「ハウスが狭い」という言い方をしますが、狭いスペースでしか得点できないので、相手にとっては、後攻としては複数得点(を)欲しいんですが、なかなか複数得点取るのが難しい展開という風になっていきます。

なので先攻はアイスをいかに狭くして、相手に1点だけを取らせるかっていう形を作っていくのが理想です。なのでセンターラインは閉まっているんだけれども、ハウスが広い状態になってしまうと相手としてはこの範囲で得点することが可能なので、例えば2点を取るっていうのが優位になります。

後攻のチームとしてはハウスが広いことが複数得点取る可能性が広くなります。なのでなるべく(ハウスの)真ん中の方で、自分たちのしっかり(相手に)出されないNo.1(の石)を持ち続けるということが大事になってきます。

こんな風にですね、(センター)ガードがあって自分たちの石がこういう風にNo.1を取ってる状態で、最後赤チームの最後の石、ラストロックがあると、もう必然的に赤は1点を取るしかない、むしろ1点を取るのももしかしたら難しいかもしれないっていうような形に持っていって相手に1点をあげる、1点を取らせる形を作っていくのが先攻です。

パート④−2 後攻のエンドプラン

後攻としてはなるべくハウスを広く使いたいのでコーナーガードを置く形。コーナーガードがないとなかなか2点3点っていうのが取りにくくなるので、まずはコーナーガードを置きます。相手のガードももちろんこんな風にあったりするんですけれども。

この状態で例えば相手はもちろんハウスを狭くしていきたいので、(ハウスの)センター付近に相手の石が入っている状態っていうのがあります。

ただここで後攻が複数得点(を)狙いたい時は、相手の形としては今相手にすごく有利な形ですが、例えば2点目3点目になるような石をしっかり作っていくことによって、今の状況としてはもちろん黄色が1点っていう状況なんですけれども、この(赤の)石が入っているということが、最後ラストロックを投げる時に(黄色のNo.1ストーンを)しっかり出し切ったら複数得点になったり。

この状況だったとしても何かしらの可能性としてガードから飛ばすとか、可能性を残す石っていうのをサイドの方に作っておくと、2点目3点目の目が出てくるという形になります。そのためにはハウスをもちろん広く、なおかつ相手が有利な形をキープしていたとしても、ちょっと我慢をするっていう展開が大事になってきます。我慢することによって、相手の出方にももちろんよりますが、相手は嫌なんですよね。この2点目3点目(になる石が)入っているのが嫌なので。

この状態で例えば先攻のチームはNo.1(とNo.)3(を)持ってますけれども、相手の石が今ハウスの中に3つも入っています。じゃあ(先攻の黄色が)何をしにいくのかって言うんだったら例えばじゃあもちろんね、この石。

こんな風にこの(ハウス内の赤の)石の有効性をなくすために例えばフリーズにいく。もちろん(赤の石が)見えていれば、もちろんテイクアウトしてももちろんいいです。先攻チームとしてはなるべくたくさん点数を取られないようにしたいので、2点目3点目の目をつぶしていく。こういう形を作っていくんですが、例えばそこでミスが起きてしまいましたってなった時に、後攻としてはこの石を飛ばしてこれだけ出すとか。

例えばあまりにも形が良くないので前(にある石)だけ割る。相手の石がNo.1ですが最終的にもしかしたら複数得点来るかもしれない展開っていうのを、後攻は常に意識しながら(試合を)進めていきます。(ハウスの)中の石が(直接)触れなくても、センターガードから例えばこういう風に飛ばしていったりだとか。石がこんな風に散るだけでもいいですね。ハウスが少し広くなってます。

相手の石があまりにも強い真ん中の方にあると最終的に得点を取るのが難しくなっていくので、セカンド、サード、サードの2投目あたりまでにハウスを広くしつつ自分たちの複数得点になる石を残していくっていうのが、後攻としては基本的な考え方になります。

パート④-3 リード&セカンドの役割

リードの役割

では各ポジションとしてどういう仕事があるのかというと、リードの役割としては、点数がそんなに離れていなかったり、アイスの状況を見たい時は、一つガードを置いて、中に攻めていくという形を取ったり、点数が離れていてガードがいらないよっていう時は一投目から先に中に入れていくというような、フリーガードゾーン(FGZ)ルールを使うか使わないか、っていうところがリードの大事な役割になっていきます。

点数がどうしても離れている時は、絶対にガードが欲しいので。例えばこんな風にね、ダブルセンターガードって言って、2個(ガードを)置いたりするんですけれども、どうしてもってガードが欲しい時にミスで(ハウスの中に)入ってしまったりってなると、もうこれはエンドとしては致命的になるので、なかなかスチールをするのは難しい。

なのでリードの最初の2投っていうのが、そのエンドをコントロールしていくには、すごく大事なショットになっていきます。

セカンドの役割

そのエンドでどうしていきたいのかっていうのを、リードが作ったリードの形を、今度はセカンドがさらにいい状態に持っていく。いかにしてサードとスキップにこのハウスの中を受け渡すか。このリードが置いてくれたセンターガードをしっかり活かすような展開で、有利な展開に持っていくのがセカンドの役割です。

例えばセカンドとしてはハウスを狭くしたいっていうのであれば、リードが置いてくれたセンターガードの裏にしっかり入っていくという役目が必要ですし、例えばたくさんリードをしているというのであれば、(相手の)コーナーガードを外していくっていうようなショットも必要になっていきます。

たくさん負けているからガードをしたいっていう考えなのか。相手がこういうふうに(ハウス内に石を)入れてきた時に、セカンドとしてはまずは前(のガード)からきれいに割っていく。ガードを割るという役割がセカンドとしては多くなってくるパターンもあります。

いつかこの石をどうにかできるような形を取れるといいです。

相手の石がもちろん(ハウス内に)入っていれば、例えばしっかり(その石をハウス外に)出し切る。もしくは出し切って(センターに)ロールするなど、相手の石を減らす役割だったり、センターに(自分たちの石を)残す形を作るっていうことをしていきます。

ノーティックルールによるセカンドの役割の変化

セカンドは本当この、ノーティック(ルール)があることによって、なんか今までだったらもっと、前(のガードを)割ればいいじゃんみたいな,割とテイクアウト(ショット)が多めだったのが、しっかりとこの形を作るっていう意味では、このカムアラウンド(ショット)をしっかりできなきゃいけないとか、必然的にこういってガードがあったりするところにしっかり(ハウス内に投げた石を)入れなきゃいけないとか。

前までだったらこうやってバーンってテイクアウトとかできたのが、(センターライン上の石に)触れないが故に、この中に行かなきゃいけないっていう形になったりしています。なのでここが(石が)溜まりやすい(場所です)。となってくると今度ノーティック(ルール)が外れた時の後攻のセカンドの2投目で、しっかりこの2つ(の石)を出せるっていうのはすごくセカンドとしては必要なスキルになってくるので。

これができると一気にノーティック(ルール)の利が破壊できるので、ドローも投げられつつのしっかりとこういうガードのダブルテイクアウトができるセカンドがいるとチームとしては非常に心強いです。そのエンドで何をしたいかの意思をしっかりとセカンドも見せるという形かと。これがセカンドですね。

パート④−4 エンドの終わらせ方

(エンドの)最後の3投2投くらいになると、じゃあどういう風に点数を取っていくのか、相手のミスを誘うのかっていうのを考えながら、自分たちのエンドプランをいかにして締めくくるかっていう考え方をしていきます。

この状態で最後しなきゃいけないことは、赤チームとしてはやっぱりこの(黄色の)石をどうにか動かしていかなきゃいけないので、(それまでの)前を割っていた展開から、じゃあ初めてこのサードの2投目辺りでしっかりと中まで触る。もちろんこういう形にしてもいいですし、少しでも(ハウス内の石を)ずらすショットで形を変えるっていうようなことをして、スキップの2投に繋げていくというようなことをします。

エンドの例えば早い方、セカンドだったりサードの1投目くらいまでは、例えばこういう風に前を狙いに行って当たらなかったりっていうのでもまだ許せたとしても、だんだん自分たちの石の個数も減ってきた時に、これ(黄色の石)をどうにかしなきゃいけないっていう考え方になっていくので、そうなった時にじゃあミスするよりも何かしらのしっかりとした、(赤の石は)No.3、(相手の石はNo.)2までしか下げられないかもしれないけど、自分たちの石が(ハウス内に)残っていると、今度相手がミスするかもしれないっていうような形を作れるので、そのどうやったら最後点数を取れたり、複数点(狙い)だったり、相手に点数を取らせない展開を作れるかな、というのを考えたりします。

じゃあ例えばガードが一つあって、今まではこのティーラインの前へのカム・アラウンドに狙いにいってもなかなか(ガードの裏に)隠れきれずに、まあ相手にこう狙われてしまったりっていうような展開があった場合も、(エンドの)最後の2投目辺りまできた場合には、ティーラインの奥に行っても(ガードの裏に)しっかり隠すっていうようなことを目的としたりします。

しっかり隠れてることによって、例えば相手のショットも難しくなってきます。もちろん相手が(自分たちの石に)つけるこのフリーズっていうショットはなかなか難しかったりするので、相手のミスを誘いやすいようなショットをして、複数点を狙うような形っていうのも作れたりします。

先攻のスキップとしては最後に(相手に)1点だけ取らせたいっていうところでハウスをより狭くする。展開的に相手がNo.1で、黄色チームとしてはNo.2(の石が)ありますが、これもちろんこういう風に叩くことも可能なくらいではあるんですけれども、確実に(相手に)1点を取らせるためにはしっかりとここにつけて、この出されない石を作るっていう展開ですね。

するとアイスが非常に狭くなって、しかもなかなかこの(黄色の)石も出せない状況ってなると、必然的に(相手に)1点を取らせるような形になるので、相手に1点を取らせる展開っていうのであれば、しっかりと出されない石なおかつハウスを狭くするっていうようなことをやって、相手に1点を取らすショットっていうのを選んだりします。

パート④−5 基本を外れる時

基本の考え方としてはゲームプランがあって、エンドプランがあって、「FESRAIN」を基にショットを決めますよっていうお話でしたが、例えばもう序盤でアイスを読めている場合っていうのがあります。例えばもうその大会がそのシートでは2試合目だったり3試合目だったりってなると、もうアイスとしてはある程度安定して読めているので、もう1エンド目からしっかり仕掛けて様子を見ることなく攻めていくっていうパターンももちろんあります。

ただ気をつけなければいけないのはやはり自分たちの先ほど言った「アビリティ(Ability)」ですね。能力がしっかりあるのかどうかっていうのはもちろん大事なので、そこでしっかりと序盤から攻めていけるかどうかっていうのを決めるべきかとは思います。

そして5点 6点アップしているよ、5点 6点ダウンしているよっていう、点差が大量についている時はセオリー通りに戦っていては、10エンド目に勝ち切るっていうことが難しくなってくるので、じゃあ例えば毎エンドスチールをしなきゃいけないとか、毎エンド(氷上に石が少ない)きれいな展開でもいけるよねっていう形があるので、そうなってきた場合はたくさん負けてる時はやっぱりガードをいっぱい置いておきたいですし、たくさん勝ってる時はハウスの中(に石を置く)、もしくはもう石さえも(ハウス内に)いらないよねって時は、もうリードの1投目からスルーをしたりしてですね、石のない展開にしたりして。

大量得点(差)がついている時の展開っていうのは、今まで話したエンドプランだったりゲームプランに必ずしも則っている訳ではありません。

さらにはですね、例えばあまり起こってはほしくないんですけれども、ゴミが噛んでしまってそのショットが無効になってしまったり、味方チームがスイープしていた時に石にタッチしてタッチストーンしてしまった場合、これも取り除くっていうのがカーリング精神に則ったやり方になるので、そういう時は(両チーム共が)8投8投で戦ってはいるんですけれども、石が1つ無効になるっていうことは8投対7投になる展開になるので、展開としては非常に有利な展開(になる)。

相手がこうやって(石を)つけにくるよねっていうような時に、例えばこれがゴミが噛んでしまって無効になりましたっていう時なんかは、チャンスが来たっていうことでじゃあもう1回、しっかり自分たちがいい形に持っていけると非常に有利に進められることもあります。

例えばそして(エンドの)最後ですね。例えばもう本当に単なるシンプルな、スキップの先攻の最後のショット、これを弾き飛ばせばイージーなテイク(アウトショット)だったのが、例えばこれがタッチストーンをしてしまって無効になってしまいました、ってなった場合に本来だったら後攻としてはブランクエンドでしょうがないよねって言ってたのが、もう簡単に2点を取れる展開っていうのにもなったりするので。もちろんね、いつでもタッチストーンだったり、ゴミが噛むっていうことは起こってはいけないんですけれども。

まあどのショットももちろんそう(重要)なんですけれども、より大事なショットになるとクリーンの(指示の)声もでっかくなったりします。なので石の前をきれいにしていくっていうのはすごく大事で、やっぱりゴミはちょっとでも噛んだら石って簡単に曲がってしまうので、石の前をクリーンにしていくっていうのはスイーパーの役割としては非常に大事になっていきます。

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