アメフト観るなら「攻守のじゃんけん」を見る!(その1)

アメフト観るなら「攻守のじゃんけん」を見る!(その1)

YouTubeチャンネルにアップロードした「アメフト観るなら、攻守のじゃんけんを見る!」①−1と2の完全版「あの”ゴチャゴチャ”では何が起こってる?」です。

The version with English subtitles will be available soon.

アメリカンフットボールの試合を見ていると、このようなシーンをよく目にすると思います。選手やチームは何を狙ってこのような動きをしているのでしょうか?

今回は、桜美林大学アメリカンフットボール部「スリーネイルズクラウンズ」前監督の関口順久さんにその意図を伺いました。

アメリカンフットボール編①-1:あの”ゴチャゴチャ”では何が起こってる?(ランプレー編)

ランプレー、まずそもそもランプレーって何ですか?みたいなところから行くと、基本的にはランプレーは、クォーターバック、フルバック、ランニングバッグ、このいずれかの選手が持って…地上戦ですね。

センターからもらったボールを、クォーターバックが自分で走ったり、もしくはフルバックやテイルバックに渡して、いろんなところ走ってもらうというのがランプレーの基本になります。

で、一番多いのはやっぱりこのランニングバックですね。この人がとにかくボールを持って走るということに対しては専門の仕事になりますので、大体多くのチームはランプレーの8割ぐらいはこのランニングバックにボールを渡して走らせるというのが多いんじゃないでしょうか。

ちょっと代表的なプレーを書きましょうか

代表的なプレー、世の中でですね世間一般的に言うと「パワー」って言われてるプレーですね、「パワー」。これは世界共通語です。アメリカに行っても日本でも「パワー」っていうと大体このプレーになります。

で「パワー」っていうと、これはオフェンスはIフォーメーションなんですけど、いろんなフォーメーションからもちろんパワーはできるんですけども、まあ、一番オーソドックスな形ですね。

まずはこのディフェンスタックルに対してガードとタックル、ここで押し込みますね。で、センターはこの人を一人で頑張っていきましょう、と。タイトエンドはここからリリースしてこのインサイドラインバッカーをブロックします。でこれで、フルバックがこの人を、これ「キックアウト」というんですけど、外側にブロックするんですね。

そうするとここにまず穴ができる。ここを走らせるタイプですね。

タックルの外側を走らせるのが「パワー」というふうになるんですけども、大体多くの「パワー」はここに、この逆サイドのガードを連れてきてこの人をブロックすると。で、クォーターバックはボールを持って…ここに走るランニングバックに渡して、この選手が、この、今2人でですね、押さえているこの際を走ると、というのが「パワー」のプレーの基本になります。

ま、これはあくまでも「パワー」という…俗に、誰が誰を取って、このディフェンスのフォーメーションに対しては誰が誰をブロックして、この穴を走りましょうという、所謂、俗にいう「ギャップスキーム」ですね。

さっきの「ギャップスキーム」と比較して、次は「ゾーン」。だいたいゾーンというですね、インサイドゾーン、それからアウトサイドゾーンとこれ2種類あるのが多いんですけれども、今回はちょっとインサイドゾーンに限って少し話をしたいと思います。で、「ゾーン」っていうのは何かっていうとですね、基本的にはエリアをブロックします。つまり、「右のインサイドゾーンやりますよ」と言うと自分の外側のギャップ、ここをブロックするんですね。タックルの選手もここをブロックする。ここに来た選手をブロックする。自分の隣のギャップ、ここをブロックしていきましょうと、こうですね。

この選手がこっち来たら、タイトエンドがブロックする。この選手がこっち来たら、ガードがブロックする。こう来たら…こういうことですね。例えばこういう風にディフェンスが詰めてきたら、みんなそれぞれこういう風にブロックしましょうと。

で、ボールをもらった…クォーターバックからもらったランニングバッグは、こうやってクォーターバックが渡してですね。自分がここでボールを持った時に果たしてどこが一番空くかなと。

まあ、だいたいこんな綺麗に並ばないんですけど、例えばまあ、こんな、こういう風になってる、「お、ここ上がってるなぁ」と。「ここしっかりブロックしてくれてるなぁ」と。で、「ここもブロックできてるなぁ」と。「きっとここ空くよね」と、というと、ここのAギャップを走ると。

もしくは、例えばこんな感じに、いながらも、みんなそれぞれ綺麗にはブロックしてくれてるんだけど、どうやらなんかなんとなく「ここがこういう感じでブロックしてくれてるよ」と。「押し込んでるよ」と、「ここも伸びてるよ」っていうと、まあこういう風に。

基本的にはどこを走るというのは、何となくは決まっているんだけれども、どういう風にブロックできてるかなというのをこの人が見極めながら、自分が走るコースを決めていくと。そういうプレーです。

これゾーンというのは中、こうですね。このタックルボックスの中を走るプレーに関しては「インサイドゾーン」、外を走るプレイに関しては「アウトサイドゾーン」という名称が大体付けられているということですね。

まあ、これの中では比較的このブロックの、どこを自分がブロックするか、誰をじゃなくて、どのエリアをブロックするか、それに対してボールを持った人たちが、あ、これならここ空くなと思いながらその走路を自分で作っていくと、いうようなプレーが大体ゾーンプレーのコンセプトになります。

ランプレーのオフェンスラインの役割っていうのは、さっきのタイトエンドと合わせてなんですけど。決まった走路を空けるために、自分が、相手のディフェンスのフォーメーションにもよるのですけど、誰をブロックするかって、大体決まるわけですね。その人たちが、ボールを持ってるランニングバッグにタックルさせないように、とにかく押し込むと。押し込む、押し込む。

これが役割になります、はい。

だからゴチャゴチャゴチャって見えてるんですけれども、実はこの人たちには明確な役割が決まっていて、誰が、こういう「ギャップスキーム」だったら、誰が誰を取る、さっきの「ゾーン」だったら、どこのエリアに来た人を取るということが決まってるんですね。

その中で、ランニングバッグが走るだろう、もしくは自分の役割であろうところに来た人に対して、その人がランニングバッグをタックルしないようにですね、体を張って走路を開けるというのがランプレーのオフェンスラインとタイトエンドの主な役割になるということですね。

アメフト編①-2:あの”ゴチャゴチャ”では何が起こってる?(パスプレー編)

じゃあ次、パスの時にこの人たちが何をしてるかという話ですね。

まあ、パスってそもそも、センターからボールをもらったクォーターバックが、だいたいちょっと下がるんですよね。ここにいると、こういう人たちが手上げてパス遮られちゃうんで。パスを…ボールをもらって、少し下がりますよと。で、レシーバーは決められたヤードを走って、そこで振り向くのか、そこからアウト行くのか、そこから長い距離走るのか、みたいなことを、決められた「ルート」って、「パスルート」というんですけども、走りますよと。

で、そこに到達するまでクォーターバックっていうのはボールを持って待っていないといけないわけで、オフェンスラインのこの5人の選手の主な役割としては、これに対して、クォーターバックを潰しに来るわけですよ、ディフェンスの選手というのは、特にこのディフェンスラインって呼ばれている選手ですね。

この選手たちがこう、こういうふうにですね、クォーターバッグを…パス投げる前にクォーターバックにタックルしてやろうという風に目掛けてくるのを、目掛けてくる人たちに対して、クォーターバックを守るというのが主な役割です。

パスってだいたい2秒とか、2秒から3秒の間に投げられることがほとんどなんですね。3秒以上になっちゃうともう、大体クォーターバック捕まっちゃったり、3秒、特に4秒以上になっちゃったらこの人たちに捕まっちゃうことが多くなるので、まあまあ、3秒から4秒ぐらいをいかにクォーターバックに、さらにプラスしてどのくらい長い時間クォーターバックに時間を与えることができるかというのが、パスの時のこの(選手たちの)役割になるんですね。

当然ですね、この選手たち、ディフェンスの選手たちもバカじゃないので、毎回毎回決まったところに来るわけじゃないんですね。

ディフェンスの人たちにしてみたらクォーターバックサックっていうのは、やっぱり一つの勲章ではあるので、とにかく「クォーターバック潰したい」と、「サックしたい」という風に思うと、何をしてくるかというと、例えばですけどクロスしてみたり、ディフェンスエンドがこっちから行って「おー、こいつ行くんだ」というところにこの選手がこう回ってくるんですね。これエンドとディフェンスタックルがクロスするので、俗に「EAT(イート)」と言います。「エンドとタックル」という意味ですね。

で逆もあって、例えば、タックルの選手が先にこっち来てですね。こんな、「おーなんだ、DTの選手こっち行っちゃったよ」といったところにこう目掛けてくるのは…これ「TEX(テックス)」って言うんですけど、「タックル・エンド・クロス」って。

こういった、「スタンツ」ってこれ俗に、ディフェンスラインがこう交差して入ってくることを「スタンツ」と呼ぶんですけど、スタンツ入れたりとか、もしくは「いやいや、それだけだともうクォーターバックにパス投げられちゃうから、もっと確実にクォーターバックにサックしたいよね」っていうと…じゃあ、こういう風にですね。みんなこっち側に、こっち側に、「おー行くよね」と言って、実はこの人が入ってくるみたいな。

ディフェンスライン以外の人たちがパスラッシュしてくることを「ブリッツ」というんですけど、こういったように「スタンツ」とか「ブリッツ」を駆使してクォーターバックサックを狙っていくというのがよくディフェンスの選手がやることです。

オフェンスのこの5人の選手たちは、とにかく「それをさせまい」ということで、「いやいや、こっち行ったって俺は騙されないよ」っていうことで、こうやってブロックしてみたりとかですね。これはプロテクションと呼ぶのですけども、綺麗にコップのようにですね、クォーターバックを守ることをカップというのですけれども、こういったことで、ここで常にですね、ラッシュする選手に対してブロックする選手、っていうのがパスプレーの時には常に起こっているわけですね。

パスプロテクションに関しては、基本のベースというのはみんな一緒なんですけれども、例えばポジションに応じて、例えばここですね、中の選手は大体2対3で、外が1対1になることが多いんですけれども、こういう外側にいる、こういう外の速い選手をプロテクションするテクニックと、中の重い選手をプロテクションするテクニックは少し違ったりとか、こういったテクニックを日々練習していてですね。

逆にディフェンスの選手たちは、パスラッシュと言ってですね。例えばこうやって、クルっと回ってスピンしたりとか

あと、腕を使ってこの人たちをアンバランスにさせたりですね。そういったこのパスラッシュのテクニックも多彩なテクニックがたくさんあって、これをやっぱ日々練習しててですね。

だから単純に、パコッとぶつかりに行ってる選手はほぼいないと思います。特にプロのレベルなんかで見ていくと、ここで腕を叩いてみたりとか、さっき言ったみたいなスピン、クルッと回って行ってみたりとか、いろんなテクニックを使ってこの人たちはラッシュしているので、なんとなくここで「ゴチャゴチャゴチャってやってるよな」っていう風に見えるかもしれないですけど、

オフェンスは有利に進めていきたいし、ディフェンスはビッグプレーをしていきたいし、というところで、ゲームプランも組まれたりもするので、そういったところも、ある意味フットボールの醍醐味でもありますね。

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