YouTubeチャンネルにアップロードした「アメフト観るなら、攻守のじゃんけんを見る!」⑨ー1から3の統合版「サイドラインの考え方(試合前の準備)」です。
アメリカンフットボール編⑧では、アメリカンフットボールの試合でのオフェンス(OF)の対応について教えていただきました。
アメリカンフットボール編⑧では、サイドラインにいるコーチ陣の考え方について、今回も桜美林大学アメリカンフットボール部「スリーネイルズクラウンズ」前監督の関口順久さんに伺いました。
パート⑨−1 ゲームプラン
試合前のゲームプランですね。基本的には相手チームが、例えばオフェンス(OF)のコーチであれば、相手チームがそれまでの試合でやってきたことの統計をとって、その中でどのシチュエーションだったら自分たちが有利なプレーが展開できるのかっていうのを探すのが大体多いです。
もしくはこのフォーメーションについた時に、これだと明らかにウィークサイド(にDFの)人(が)少ないよね、みたいなことを見つけた時は、それを徹底的に突くゲームプランを考えたりとか。
※ウィークサイド(Weak side):ボールからサイドラインまでが近い方のサイド
あとはやっぱりオフェンスライン(OL)対ディフェンスライン(DL)(の勝負)ってのは結構大きいんですよね。ここの(OL対DLの)組み合わせは絶対勝てるぞとっていうことになると、じゃあ3rdダウンショートはこいつ(G)の後ろのランプレーで行こうみたいなことがまず最初に言えるんです。
じゃあそうするとここのランプレーばかり使ってると、そのうち(DFの)人がこう集まってくるんで、そのうち出なくなるんで、そうしたらもうここのランプレーは3rdダウンショート用にとっておきましょうと。それ以外の時は外のランプレーを基本的に使っていって、本当に肝になるシチュエーションの時だけ、ここのラン(を)使いましょうということですね。
だからつまり自分たちが有利になるシチュエーションをどこで作って、どこで使うかっていうことを決めるのが基本的にゲームプランだと思うんですね。なので相手の、OFのコーチだったら(相手の)DFの傾向を今まで通り見ながら、その中で自分たちがどこに行ったら有利になるかなということを常に考えていることを、常にやっている感じですね。
あとよく見るのは相手のDFがどのシチュエーションでロングゲインされているか、どのシチュエーションでタッチダウン(TD)を取られてるかっていうと、きっと何かそこには弱い理由が、失敗する理由がある訳で。このDF傾向でいうとこういうプレー(に対して)弱い。ちょっと遅めのプレーに(対して)弱い。じゃあドローやろうかとか。
※ドロー(プレー Draw play):パスのフェイクをした後にランプレーをすること
これだとこういうミス、例えば(カバーの)受け渡しのミスが起こりやすいなとかっていうのを考えると、あえてそのシチュエーションを作るとかですね。同じ失敗は同じく出てたりすることが多いんですよ。いかに自分たちが有利になるシチュエーションをどうやって作るか、それをいつ持ってくるかっていうことだと思いますね。
それがゲームプランで、じゃあそうするとスクリプトっていうんですけど台本じゃないですけどね。最初の10プレーとか12プレーとかはやるプレーを(試合前に)決めておいて、その中で相手にやっぱりこのフォーメーションするとこのアジャストしてくるねとか、このモーションするとこういうミスマッチが生まれるねとかですね。モーション(と)シフトを繰り返すことによって、ラインバッカー(LB)とエース(ワイド)レシーバー(WR)が必ずマンツーマンの関係になるみたいなことはよくあるんですね、往々にして。じゃそれ(のような状況)をじゃあいかに作るかと。
で最初の10プレーの時に、最初に本当にそれをやってみて、相手が同じアジャストしてくるかなとか確認してみたりとかですね。
あと僕なんかはそうなんですけど、スクリプトがあってシチュエーションごとですね。1stダウンがこういう数プレー。2ndダウンロングがこういう数プレー。3rdダウンショート、ミドル、ロングで、(相手が)こう来たらこう、こう来たらこう。
でレッドゾーン、ゴール前になったらこういうプレーやりましょうっていうのをリストとしてまとめておいて、そのシチュエーションに行ったらそこ(のプレー)をコールするといったことを機械的にやると、試合中にあれこれ考えていても(考える)時間が短いじゃないですか。
で試合って焦ったりもするし、うーんって迷ったりもするし、すごくいい判断ができない可能性が高いんですよね。そうするとやっぱり試合の前までにある程度何(をする)かを決めておいて、ダメなものをスクラッチ(削除)していくっていう方がプランニングとしては多いと思いますね。
パート⑨−2 試合の入り方
(アメリカン)フットボールって先制点とると強いんですよ。とにかく3点でも取って、まずはリードしてゲームを始めるっていうと心理的にも有利に働くんで。そうするとスクリプトの中である程度得意なプレーを散りばめていって、変な勝負はせずに、見せたいフォーメーションだけ見せて、得意なプレーでとにかくフィールドゴール(FGを)一発蹴ろうかっていう考え方もあるし。
あとは相手が圧倒的に強ければ、今まで自分たちがやってきた(プレー)、セルフスカウトっていうんですけど、自分たちのオフェンス(OF)の傾向から見て全然ある意味違うことを最初の10プレーやって、(相手のディフェンス(DF)を)混乱させる。混乱している間に点取っちゃおうみたいなこともアンダードッグのチームはやったりするので。
※アンダードッグ(Underdog):実力差があって、勝ちそうにないチームのこと
先取点取ってる時っていうのは大体ボールがちゃんと動いてるっていうことだと思うんですよ。
最初リターンからボールをもらって、この辺から(OFを)始めたんだけど、結構ちゃんと出る(前進する)よね、みたいなところでいうと、あぁ大丈夫 大丈夫俺たち今日もボール進められるじゃんみたいな自信も生まれてくるし、コーチとしてもあぁ大丈夫今日のプラン悪くないねってポジティブに捉えられるし、サイドラインとしてもやっぱり(自分たちが)リードしてると比較的選手って思い切り動けたりするんですよね。
ミスがあったりして(相手に)リード許してると、やっぱりなかなかミスできないなっていうこともあるので、プレーとしては小ぢんまりしてくるっていうところもあるので、やっぱりリードしてるっていうのはすごく有利だと思います。
Q:プレーはどのくらい用意しているのですか?
全部合わせるとやっぱり100プレー前後は少なくともあるんじゃないですかね。本当に少ないチームだと30プレーぐらいだったりします。でも良し悪しもあって、やっぱり少ないプレー(数)でいくと、プレーの完成度が上がるんですよ、同じ練習時間でも。
そうするとコーチの考え方、僕はどちらかというとそっちの(考え)方なんですけど、なるべく少ないプレーで完成度を上げて試合した方が、結局いいプレーって1試合で3回も4回も使ったりするんですよ。であればその3回も4回も使うプレーをとにかく練習しようよとしっかり回数多く。でとにかく100プレーあるよりも50プレーで完成度が高い方が、やっぱり試合では効果を発揮しやすいので。
ただあまりにも(プレー数が)少ないとそれを止めにくるのでDFは。傾向が出やすくなってくるので、だからそのバランスの差なんじゃないですかね。
1人能力が高い選手がいると、ある程度こいつにボール集めておけば、その都度その都度5ヤード10ヤードゲインしてくれるよねみたいなのがあるんですけど、11人が11人、いやいやうち(の選手は)悪くないんだけど、そんな(個々の選手の)能力(は)高くないんだよねっていうチームだったりすると、やっぱり間違いがなくてやり慣れてるプレーで能力を自分たちで発揮しやすいプレー、これを持ってるチームは強いんですよ。
そうすると自分たちのプレーに不安要素が減るので、本当(に)集中しやすくなるんですね、OFの選手は。
パート⑨-3 オフェンス(OF)の制約/タイムマネジメント
オフェンス(OF)の制約
OFが有利な点でいうといつ(プレーを)始める、始めるタイミングはOFが決められるし、それから何をやる、どんなフォーメーションについて、どんなプレーをやるのも当たり前ですけどOFが決められると。それに対してディフェンス(DF)は常にアジャストをしていく訳ですなんですけれども。
あまりにもOFに有利になっちゃうと、ものすごい常にハイスコアリングゲームになって、DFとしてはなかなかこう、ビッグプレーが生まれなかったらとかショーとしてすごくつまらないゲームになってしまうということで、例えば一線上にはですね(OFの選手が)7人いなきゃいけないですよ。1、2、3、4、5、6、7 かつパスを取れるのはその両端の選手だけですよとかですね。
つまりオフェンスライン(OL)のタックル(T)からTまでの5人の選手に対しては、原則としてこの人たちがデザインしてボールを持つプレーっていうのは基本的にないので、(OLが)ボールを触れない選手っていうのはそういうことだったりしますよと。
それからあと一線目の選手、この7人以外の選手、つまりこの4人の選手しか例えばモーションができなかったりするので。パスを取れる選手はクォーターバック(QB)も含めて1、2、3、4、5、6人、OLは(パスを)取れないので。モーションできる選手っていうのはさらに減って、この4人しかできない、QBも一応モーションできてパスも取れるので。こういった制約があるからこそ、例えば前線、前を強調するDFをやってみよう、後ろを人数を増やしてパスを守ろうとかですね。いろんなことがDFもやりやすくなってくるので。
これだけ大きいスペースを本当に11人できれいに守ろうと思うとすごくそれは難しい作業なので、それをやはりやりやすくするため、可能にするためにこういったOFには、スクリメージライン上には必ず7人いなきゃいけないです、動ける選手、モーションできる選手はこれだけです、パスを取れる選手はこれだけですといった制約が、アドバンテージと共にそういう制約も一緒についてくるというのがアメリカンフットボールの試合ですね。
タイムマネジメント
野球とアメフトの一番大きな違いはやっぱり時間だと思うんですね。野球は9回、アメフトは時間っていう制約がある中で、どのタイミングになったらちょっと自分たち焦んなきゃな、みたいなことも正直決めたりもします。
やっぱり3クォーター(Q)でまあ4シリーズ差あったら、なるべく時間(を)使わない、早いタイミングで点を取っていこうっていう風に考えていくし、4Qってなった時に2シリーズ(差)以上あるとその辺はだんだん考えるようになりますね。だからもちろん時間の使い方、その決められた25秒計 40秒をどうやって使うかと。
あとはタイムアウトですね。タイムアウトをどういう風に、(後に)取っておくのか、いや積極的に早いタイミングで(タイムアウトを)使って時間を作る。でNFLなんかだと2ミニッツ・ウォーニングって、勝手に時間が止まるタイミングもあったりするので、ってことは4回くらい(時間を止める方法を)イメージとしては持ってるんですよ。
※2ミニッツ・ウォーニング(2 Minutes Warning):NFLの試合で第2クォーターと第4クォーターの終了2分前以降にプレーが止まった時に自動的にタイムアウトが取られること
でそれをどういう風にカードして切っていくかということも、この辺はどっちかというとヘッドコーチ(HC)、監督の裁量ということになってくるかなと思います。名将って言われる監督はやっぱりタイムマネジメント、クロックマネジメントっていうのはうまいし失敗しないし、変なところでタイムアウト(を)取らないし。まあそういうところがあるからこそ、名将って言われるのかなっていう風には思いますけどね。
これも一つの(アメリカン)フットボールの他のスポーツにはあまりない(特徴)。時間が止まったり動いたりするっていうようなスポーツはあまりないと思うので、そういった意味では一つの考え方として面白いところかなっていう風には思います。
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