柔道観るなら「組み手争い」を見る!(その4)

柔道観るなら「組み手争い」を見る!(その4)

YouTubeチャンネルにアップロードした「柔道観るなら、組み手争いを見る!⑧と⑨の完全版「柔道観るならココも見る!」です。

The version with English subtitles will be available soon.

柔道編その1からその3までで、柔道選手がどのような駆け引きを行っているか教えていただきました。

柔道編その4では、再び了徳寺大学職員柔道部(現・SBC湘南美容クリニック柔道部)の山田利彦部長兼総監督に知っておくと柔道を見るときに何倍も楽しめるポイントを伺いました。

柔道編⑧「ココを見ると柔道が面白い!」

トップ同士の試合の注目ポイント

Q:今回のお話によると、トップ選手同士が戦う時はお互いに相手の持ち技をかけられないためにどうするかを考えているようですね?

やはり世界のトップ、また日本のトップでもですね。お互いにやはり試合の経験や練習の経験があったりしますので、相手の得意技っていうのは大体分かっているんですね。

ですので非常にわかりやすい例で言うと、井上康生前監督は非常に内股という技が非常に得意なんですけども、そうした時に井上先生に(両柔道家が)ケンカ四つであれば、引き手をしっかり取られてしまうとやはりそこからの内股っていうのは非常に強烈なものがありますので、いかにその 引き手を取らせないあるいは自分が優位に(組み手を)持つかですね。

そういったところがとても、井上(康生選手)対鈴木桂治(選手)前監督(と)現監督との戦いなんかでは、そこら辺がですね、ケンカ四つのところでも見所であったり、またコントロールし合いっていうところですね。

なのでそういったところがわかっていて見るのと、またわからないで見るのとでは非常に、組み合っている中でですね、あっ今いいとこ持ったなとっていうところがわかったりするので、またそこの醍醐味や面白みがよくわかるようになるんじゃないかなと思いますね。

Q:井上先生に引き手を取られると、重心を動かされてしまうということでしょうか?

はい。で内股ってグッとこう引く技ですので、そこでいいように持たれてしまうと引かれてしまうんですね。

でもちろん(相手も)体を捻って防ごうとはするんですけども、非常に強烈ですからそこのところに持っていけたり、いきなり内股でなくですね。大内刈等で崩して、連続技のような形になったりとか…っていうところに持っていかれますので、非常にスピードもありますしそういったようなところでいいとこを持たれてしまうと、そういったことを相手に許してしまうんですよね。

自分がその逆に今度は例えば鈴木先生の立場とか、相手の左の相手の立場として、それをこっち側に引いていれば相手が自由にできないんですよね。

で動こうとするときに、鈴木先生の足技(は)非常にうまかったので、そういったのが出てくると井上先生も自分の受けができないというようなことにつながってきますので、そういったところのお互いの駆け引きっていうのが見えてくると、あぁ投げたんだとか、あぁかけたんだっていうだけじゃなく、そのもっと前のですね、お互いの攻防というものが非常にわかってくるんじゃないかなと思います。

Q:今話に出た大内刈りからの内股への連携は、以前伺った後ろに重心を動かしてから前に倒す連携ということですね?

はい。なのでそういったトップ選手ですね。一流選手だったらやっぱり一つ一つの技(が)非常に強烈ですから、それに対して相手が(技をかけて)来るなと思うと反応するんですよね。クッと(体を)ひねったり、体重を移動したり。

で(相手に)そうさせておいて、次に(別の技が)来るんで、そこが非常に速い場合ですと反応が間に合わないことにもつながりますし…っていうようなところをお互いやり合いなんですけども、ただそれも(いい)組手がないと、持ってないと伝わりませんので相手に。その圧力だったりとか、フェイントのようなものとかっていうのが伝わらないと相手は何もリアクションしない訳ですよね。

ですと最終的に技もかからない、(相手を)崩せないってことになってきますので、その前にそれをするためにいかにいいところを持つか…っていう前段階での組手争いというのが生まれてくる形になります。

Q:仮に相手に組み手を持たれたとしても、相手の力が直接伝わってこないように相手の袖を絞り合うという話もありましたね?

はい。なのでただ(相手に組み手で)持たれて、ただ引かれるっていうのだともう実力差がある試合になってしまうんですけれども、そこで(相手が攻めて)来てもそこを巻き返して、で自分が逆に引いたりですね。

それから普通ですと(組み手は)襟と袖を持つんですけれども、そうじゃなくもっと(違う形で)、襟と襟を両方持ったりですね。っていうような形で(組み手を)変えたりとかですね。

それで海外の選手なんかで多いのは、それでそういう形で中で(相手に)釣り手を使われてこう間合いを取られたりして、(自分が)動かされると不利(になる)。

自分たちの柔道できないっていうので、グーッと寄せて間合いを詰めて、でそういうことさせないようにっていう形ですね、はい。

なのでよりもっと密着して密着して…っていう形を取る選手の方が、海外(の選手)で力もありますから、多いんですけれども、っていうようなところの戦術に来たりですね。それをいかに今度日本の選手はそうされないように、釣り手を持とうとしたらたぐられて寄せられますので。そういったところをこっちの、もう一個の手を使いながら、なんとかここで間合いを作ってっていうような形の攻防が、まあ国際大会なんかでは見られるところになります。

Q:戦略的にある技を出し続けて、その後隠していた技を出すということもあるのでしょうか?

はい、それも非常に。はい、ありますので、そこのところは本当にもう(お互いを)知り合ってるもの同士ですね。

なので 66キロ級でオリンピックの最終選考を争った阿部(一二三)選手と丸山(城志郎)選手なんかの試合なんかも、もうお互い手の内は何試合もやってわかってますので、その中で最後の試合に向けて、どう準備(をして)持っていくかっていうところもですね。

今持っているものをより強化して、そこでもっと圧倒していくのか。それかまた新しい技をそこに一つ入れてですね、アクセントをつけて。でちょっと今まで違うなと思わせられるのかっていうようなところにもつながります。

ただあの(ような高い)レベルですので、それが安易な技でしっかり練れてない技ですとそれを返されたりとか、っていうところに繋がりますので、そこのところがまあみんな、そこのところで(考えながら)、今(新しい技を)かけられたな、だけどとか。まだそこまで(技を練れていないな)、この決勝戦で出せるレベルには、そういった技にはなってないな…っていうようなことはありますね。

阿部選手の良さは、前に出て行って前に出て、先に先に技をかけるっていうところを徹底していって、で丸山選手の方は少し間合いを取りたいんですよね。間合いを取りながらそこで巴投とか内股を打っていきたい。でそれで(試合が)ずっと長くなっていくと、阿部選手の方が負けた試合は、今まで阿部選手が丸山選手に

負けた試合はそこで少し自分のその圧力がかけきれなくなってきたところに巴投とかですね。捨身技でやられてるっていうパターンが多かったんですけども、そこも阿部選手の方がそこをもっともっと、より自分が(技を)先にかけて先にかけて、より圧力を(相手にかける)っていうところで、新しい(技を出す)というところではなかったんですけれども、より今の持ってる自分の(強い)ところを徹底して出していったっていうところかなと思うんですね。

Q:東京2020大会では大野将平選手も最後の別の方向の技を出したと伺いましたが?

はい。ですのでもう世界中に大野選手の内股(と)大外刈ですね。非常に(強力であることは)もう知れ渡ってるんですけれども。

であの時(は相手と)相四つですので内股ももちろんかけ(られ)るんですけども、(相手も内股を)分かっててそれも研究されてますし。そういった時に最後お互いにゴールデンスコアへ入って苦しい時間帯なんですけども、そこで大野選手が何回も大外刈(を)出してたんですね。でいいタイミング(の大外刈)もあったんですけども、(ほとんど)もう一つだったんですけども、それが非常に相手の中にも意識が蓄積されていって、そこで大外刈の記憶があるのでグッと体を捌いた時に、その対になる技の支釣込足で(大野選手が)うまく投げたなと思いますね。

あれは本当にそういった対になる技の見本になるような、はい。こういう技を持ってればこれだけ効果的なんだ、あの本当に痺れる場面でもっていうような場面でした。(そういう)ところでしたね

海外の選手の特徴と戦い方

Q:国際大会では階級によって力関係が異なりますが、戦い方も変わるのでしょうか?

全般的に今は重いクラスの方がどうしても苦戦はしていると思います。まあ身体的能力ですね。その体力とかっていうところにもつながるんですけども、そうしたところで本当に100kg級とか100kg超級だと2メートル級でですね。でそこの2メートル級がもうどんどん動けたりですね。そうしたような選手、まあ(テディ・)リネール選手なんかそうなんですけれども(そういう選手が海外には)いますので、そうしたところの選手に対して我慢できる時間帯ですね。

ウルフなんかも「ウルフタイム」ってよく言われまして、でももちろん瞬発力もあって、力ももう十分、ハーフでもあるってこともあるのかもしれませんけれど、非常に(力が)強いですし、海外選手には(力では)引けは取らないんですけど。それでもどちらかというと、ある程度(試合を)少し長引かせて、相手が疲れていったところの方がよりいいんですね。

なので(ウルフ選手は東京2020大会では)全試合ポイント取ってちゃんと勝ってるんですけども、我慢する時間帯はしっかり我慢しながら、でここっていうところに技をあの時はかけてしっかりとしたポイント(を取って)ですね。準決勝や準々決勝は強敵との勝負だったんですけども、(相手は強敵)ですし、(ポイントを取って)勝利しましたし、最後の決勝戦ですね。一回負けて(いる)前々年のですね、2019年世界選手権で負けた相手だったんですけれども。

その選手のところも我慢に我慢を重ねて、韓国の選手は非常にスタミナもある選手が多いですし、彼も非常に、相手の選手もスタミナ(が)ある選手だったんですけども、さすがにもうあの場面ではウルフ選手の方がスタミナで勝っていたなと。そこでしっかりと決め切れたというところですかね。

軽い方の方(=階級で)は(日本の選手は)力が強いんですけどやはり、よりそこの体力差っていうのは重い方の階級よりは出にくいところではあるので。

例えば大野選手なんかは多分海外の選手に力では負けてないんじゃないかなと。逆に言えば上回ってんじゃないかなと(思うの)ですね、あの一回大野選手が組むと簡単にもう切られないので。そういったところはすごいところだなとまた思いますね。

Q:「指導」を戦略的に利用するような戦い方もあるのでしょうか?

はい。やはり(相手と)組んでみて投げられそうかな、どうかなっていうところ(は)あります。ちょっと(相手を投げるのは)なかなか厳しいなといった時に、そうした時にもしさっきも言ったような内股(を)とりあえずかけてもなかなかかからないっていった時に、じゃあここでもう技数で。攻め続ければ相手に指導が行きますので、そういったようなところで(試合の)中での戦術変更ですね。

それからもちろん最初からも(相手は)こういう選手なんで、ここもうまともに勝負してしまうとちょっと厳しいかもしれないというところは相手のいいところをですね、コントロールしながら先に先に技を出すというところで、なんとかですね、勝ちにつなげるっていうのはもちろんみんな考えていると思います。

国内大会特有の楽しみ方

Q:国内の団体戦は国際大会とは違う楽しみ方があるそうですね?

はい。この団体戦が非常にですね、やはりみんな大学柔道の中では何よりも一番熱が入るところで、なんとしてもそのタイトルを取りたいっていう思いを持って各大学(が)ですね、しのぎを削っているのが現状になります。

Q:団体戦特有の面白さを教えていただけますか?

はい、(大学の)団体戦もですね、男子の場合ですと無差別なんですね。無差別なので、とにかくその大学の、あなたの大学の強い、一番強い7人。こっちの大学の一番強い7人を自由配列で並べての勝負になりますので、(そういう配列に)なると例えば向こうのエース。

先日(注:2022年6月)あった国士舘大学対東海大学の決勝戦ですね。あの時は斎藤立(たつる)選手、国士舘の全日本チャンピオンの齋藤立選手。でこっち(東海大学)は90kg級の(学生)チャンピオンの村尾(三四郎)選手ですね。でこの(二人の)選手たちがもちろん(両大学の)ポイントゲッターなんですけども、じゃあいかにこの選手たちを止めるか。

なので(ポイントとして)引き分けがあるんですね、国内の団体戦は。国際のIJF(国際柔道連盟)の団体戦はもう引き分け(は)ありませんので、必ずゴールデンスコアに行って勝負がつくんですが、引き分けがありますのでこの引き分け(が重要)。いかに引き分けに持ち込むかですね。

みんな全部7人が7人(勝って)全部(の試合を)取ればいいんですけど、やはりそんなことはないので(引き)分けるところはいかに抑えて(引き)分けて、で取れるところ(=試合)をいかに取るかっていうところですね。引き分けの醍醐味ですね。(引き分けがある)っていうところ。

個人戦ですと確実に負けてる内容かもしれないですけど、特に大学のルールとしては指導3で反則負けがつかないと引き分けになりますので。指導2(つ)もらっててもですね。

なのでそこのオーダーが発表された時にですね。毎回オーダー(は)変更(可能)ですので。おっ?てこの当たり、組みはどうかなっていうので、有力なところ(=選手)とちょっと力(が)劣るかなという(選手の)ところもその組み合わせ次第で、やっぱり柔道(は)個人競技ですので得手不得手、(選手には)タイプがありますので。

そうしたところでその(個別の)戦いの面白さですね。単純に4番バッター(=強い選手)が全部いるっていうだけではないですので。その4番バッターをいかに抑えるかっていう選手がいたりですね。で(両チームの)同じ4番同士でも(ポイントを)取り合ったりとかですね。っていうようなところにつながりますので、そういったところも見えてくるとまたより面白みが増してくるのかなと思います。

Q:全日本選手権も無差別ですが、自分の階級では強くても重量級との対戦では難しい点などもありそうですね?

はい、おっしゃる通りですね。強い選手、大きい選手には滅法強い選手がいたりとか。でも軽い選手にはなぜかあんまり(勝てない選手がいたり)ですね。

ちょっと個人名出してアレなんですけど、影浦(心)選手(は)担ぎ技が得意ですので、どちらかというと自分より大きい選手(が相手)の方が得意なんですよね。なんですけども(逆に)軽い選手、動かれる選手で背負投。そういう(軽い階級の)選手たちはよく自分の相手(にも)背負投(を)やる選手も多いですから。といったところでなかなか(軽い選手との試合を)取りきれないってことがですね、今までの全日本選手権なんかでもありまして、なかなか上にまで行けなかった。まあ今回、今年(注:2022年)の全日本選手権では決勝まで、そこをですね突破して上がりましたけれども。

そういったようなタイプ、得意なタイプとかっていうのはありますので。苦手なタイプとかありますので、そういったところのまた組み合わせの妙が面白いところですね。

柔道編⑨「レジェンドはココもすごい! 〜山田さんが選ぶ「見ておきたい名勝負」8選〜」

1978年 全日本柔道選手権決勝 山下泰裕 対 高木長之助

ちょっと前の試合なんですけども、今の(全日本柔道連盟の)会長(注:2023年6月に退任)の山下(泰裕)先生の全日本選手権の戦いですね。高木(長之助)先生との決勝戦の大外刈ですね。

簡単に投げてるみたいなんですけど、大外刈って例えば非常にこう足で刈っているイメージが強いと思うんですけども、上半身の崩しが非常に重要だというところは衆目一致するところなんですけども、それが非常に表れている試合であったり(します)。

1980&1981年 全日本柔道選手権決勝 山下泰裕 対 遠藤純男

(それ)からまた寝技ですね。

山下先生が(全日本選手権)9連覇とか、(引退まで)203連勝とかって言われるところのもう一つの、一番の要因の一つですね。(要因の一つ)はやはり寝技の強さ、そつなさですね。なので私もこれは聞いた話ですけども、全日本選手権で日本武道館。満員の日本武道館が相手の選手が四つん這いになると、(試合が)終わってしまうということでちょっとため息が「あ~」っていう。盛り下がりじゃないですけど、どうせもう(相手は)やられるんだろうなとっていうようなですね。

ただその(相手の)選手たちの寝技が弱いかっていうと全然そんなことないんですよね。一流の選手しか出られない日本選手権、全日本選手権の相手も、でも(山下先生は)やはり簡単に絞めてしまってしまったり、押さえてしまうっていう、やはり実力のすごさっていうのがあったのかなと思います。

Q:そのような山下先生の寝技の凄さが見られるお勧めの試合はどれですか?

遠藤先生との(全日本選手権の)決勝戦じゃないかなと思いますね。なので遠藤先生も非常に瞬発力があって体の力も強い。もう投げた音が(他の選手とは)違うっていうのは私も聞いたことがよくあるんですけれども。

その遠藤先生が、多分映像見られると(分かりますが)簡単にこう絞めが来るんで、これを何とか逃れようとして回って一気に回転して逃げようと(するのを山下先生が)クッと押さえたりですね。

見てると呆気なくあれ?って。これなんかもう、例えば(全日本選手権でも)1回戦2回戦とかですね。それぐらいとかの(試合で見られる)差があるような内容に見えると思うんですけども、それだけそのレベルでもやられてしまうというところだったのかなと思いますね。

1976年 全日本柔道選手権三回戦 山下泰裕 対 上村春樹

それと先ほどの技をですね。こう隠しておいてっていうところでは、最近いろんなところでも合宿も強化合宿も今ありますし、出稽古とかでみんな交わることが非常に多いですから、なかなかすべてを隠しておくっていうのは難しいかもしれないですけれども、当時山下先生対策で現講道館館長の上村先生がですね。ずっと隠しておいた小内巻込を全日本選手権の舞台で出して、それで勝利したっていう試合なんかもあると思います。

Q:山下先生は寝技だけではなく、立技も凄かったのですか?

藤猪省太(ふじいしょうぞう)先生っていう、世界選手権(を)4連覇した、畳のアーティストと言われる大先生もいらっしゃるんですけれども、やっぱり「山下はすごかった」っていうのは仰られてるみたいですね。あとは一緒に今も、よくご一緒させていただきます金野(潤)委員長 ですね。(金野)強化委員長なんかともお話しすると、(山下先生とは)年齢もちょっと違いますけど、(現役が)同じ時代じゃなくて良かったなと話していらっしゃいましたね。

隙がないんでしょうね。立って(も)寝ても(強い)っていうところなので。(山下先生に取って寝技は)詰将棋のようなところなのかなと思いますね。

1990年 全日本柔道選手権決勝 小川直也 対 古賀稔彦

あと無差別の醍醐味っていうと、小川(直也)さんと古賀(稔彦)さんがですね。世界チャンピオン同士が、それぞれの 各々の階級の世界チャンピオン同士が全日本選手権の決勝でぶつかって、小川さんが最終的に勝つんですけども。本当にこれが無差別の全日本選手権の醍醐味じゃないかなというようなような試合でしたね。

その時の勝ち上がり、古賀さんの勝ち上がりを見ていただいても、古賀さんのやはりいいところを(相手に)いかに持たせないか。(いいところを)持たせてしまうとやっぱり体重差(や)体格差って非常に出てしまいますので、いかに相手にいいところを持たさないかっていうところ。そこの組み手のうまさっていうところでも出てくるのかなと思います。

Q:この年の古賀先生は、相手に組ませなかったのでしょうか?

そうですね。やはり古賀先生はいかに相手の組み手をですね、コントロールして自分がいい組み手になるかっていうところが非常にうまかったですね。で古賀先生の柔道って釣り手と引き手を持って、こういうタイプじゃないので。引き手の方で相手の襟を持ってですね。

それをさせてこっちを持たせないで、いかに一本背負投とか袖釣込腰とか(をかけるか)。それから後半の方は腰車とかですね。で対の技としては一本背負投と小内巻込っていう形を作られたりとかっていうところなので。非常に技のスピードも速いですし、相手が組もう(としても)組めないところに入られるので。ですので大きい選手とやってももうそういう形で組まさないで、先に先に技を攻めていって。

当時は僅差判定 旗判定(が)ありましたので。今ですと投げない限りっていうか、指導3まで行かないと(決着がつかない)ってところで、(現在とは)ちょっとルールが違うんですけども。やっぱりそこは非常に(古賀先生は)うまかったですね。

今オリンピックとか世界選手権(を)優勝しますと予選なしで全日本選手権にチャレンジができる、今システムになってるんですけども、当時はそういったものもありませんでしたので、(古賀先生も)予選を突破して(全日本選手権に)出られてきたと。その予選もいろんなやっぱり、(様々な)タイプの選手(が)いますし、曲者がいたりとかですね。なのでその予選を突破(した)っていうのも、強い選手でも全日本選手権出られなかった選手なんかも何人もいるんですけども、そういったところの中でも(予選を)突破してそのまま決勝まで駆け上がられたっていうのがですね、(古賀先生は)すごかったなと思いますね

Q:組ませなければ、力は伝わってこないというわけですね?

はい、で先に自分が攻められる形を作ると。そこは本当に徹底されていたなというのは見て思いましたね。

Q:今の現役の選手で古賀先生とタイプが似ている、技に入るのが速い選手はいますか?

そうした中ではやっぱり阿部一二三選手、できょうだいの(阿部)詩選手なんかも本当に瞬発力は非常にですね。すごいもの持ってるなと思いますので。組際の技なんかもですし、二人の代名詞でもある両袖から持つ袖釣込腰なんかもスピードが(他の選手より)一段階ですね、もう二段階も違ったりしますので。

本当に最初出てきた時高校の試合なんかも、インターハイとか行っても勝つ負ける(というレベル)じゃなくて、もう相手がどうしようもできないっていうぐらい(の差)なんですね。それもインターハイの準決勝・決勝ですと、もちろん今までもいい選手いっぱい出ててもそんなやっぱり簡単には勝てないですし。そういったところ(で当たる相手)も(阿部選手は)バンバン投げてますし、最初の世界選手権ですね。

ハンガリーの2017年だったと思うんですけども、もうその時にはもう相手もどうしようもないなっていうぐらいな実力差があって。それをまた今度(相手も)研究してきますので、それに対しての(話は)元に戻りますけども組手のやり合い(が重要)ですね。

2003年 全日本柔道選手権決勝 井上康生 対 鈴木桂治

また先ほどもちょっと申し上げた、井上(康生)前監督と鈴木桂治監督の勝負ですね。今「全柔連.tv」でもこちらの方をお二人が解説されて戦い、勝った負けたの試合のところ(の解説)なんですけど。

一つはやはり一瞬で井上先生がもう五分だった試合を一瞬で内股で投げた試合なんかですね。鈴木先生(の)受け(は)非常に強いですから、もう体をグッと(捻って)このくるなと思うところを(体を)捌いてはいるんですがそのまま(井上先生が内股で)跳ね上げていったっていう。そのところは見ていてもすごいなって私たちも思った一戦だったですね。

2019年 全日本柔道選手権三回戦 加藤博剛 対 斉藤 立

2020年 全日本柔道選手権三回戦 加藤博剛 対 佐々木健志

寝技というところでは今までも度々名前が出てます加藤(博剛)選手と、今年全日本(選手権)で優勝した斉藤立(たつる)選手の試合ですね。体格差ではもう90kg対160kgくらいですね。もう(斉藤選手の体重が)倍近いんですけども、でもそこをうまく加藤選手が押さえ込むと。

が今度その加藤選手が逆にその後のですね、何年後かの全日本選手権で81kg級の佐々木選手に押さえ込まれて負けると。寝技師二人の戦いの中でそういったことが起きたりするっていうところも、また見て面白い試合じゃないかなと思いますね。

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