柔道観るなら「組み手争い」を見る!(その2)

柔道観るなら「組み手争い」を見る!(その2)

YouTubeチャンネルにアップロードした「柔道観るなら、組み手争いを見る!」④と⑤の完全版「柔道選手は何を狙ってる?」です。

The version with English subtitles will be available soon.

柔道編その1では、柔道選手が試合でしている「組手争い」について教えていただきました。

柔道編その2では、選手がどういうことを考えて試合を進めているのか?を再び了徳寺大学職員柔道部の山田利彦部長兼総監督に伺いました。

柔道編④「柔道選手は何を狙ってる?」

柔道は一本をお互い目指して勝負をしています。

で、投げ技のところですね。今は一本と技ありがあるんですけれども、一本の場合、スピードと、強さと、いかに背中がしっかりとついているかというところが判断されます。まずそこを投げていただきます。

そうですね。これもスピードも強さも、そして背中もしっかり畳についてますのでこうした場合は審判が一本を宣告して、これで試合が終了します。で、同じ今一本背負投をかけていただいたんですけども、そこのところで相手ももちろんそのまま投げられませんので、技をかけられても何とか防ごうとして攻防が生まれます。

そこで今のが少しでも一つでも不十分な場合には技ありとなります。では、ちょっと投げてもらってよろしいでしょうか。

こういう形ですね。こういう形ですとまだ背中がしっかりと100%ついていません。スピードと強さはそれなりにあったんですけども、こういった場合は技ありで、ということになります。

この場合、もちろんお互いに柔道をずっと練習してきている選手同士ですので、相手がどう来たらこういう技に入ってくるっていうところがわかってますので、いかにそうさせない。

ただ投げる方としては如何に相手の重心を崩すか、そしてまた如何に相手に対して圧力をかけたりしてそのリアクションですね、反応を活用するか、そしてまた高低差ですね。というところとか、そしてまた誰よりも速く技をかけられる選手ですと、そうした前に相手が反応する前に技をかけるというようなことも、技を投げるためにお互いに競い合っているところになります。

で、金丸先生、ちょっと圧力をかけてここでグッと圧力をかけました。そうしたら長谷川先生の方は少しそれが嫌なので体を下げられると、上げたい

上げたいというところに、金丸先生が沈んで技をかける。

この圧力が非常によくかかってますので簡単に投げているように見えるんですけれども、ここは非常に相手にかかってますので、上げたいな、体を上げたいなっていうところに対して、うまくそれを活用して技に入るというところですね。

今の形で、今度は長谷川先生が奥襟を叩いて間合いを寄せて、これも、こういう状況ですと金丸先生としては体を上げたいんですね。

この状態非常に不利ですから、ここのところで上げようとする力を使って後ろに…例えば大外刈ですね。

技をかけたり、これも同じような圧力をうまく使って、というところの技になります。

Q:今のが相手の反応を利用する「リアクション」ですか?

はい(リアクションと)なりますし、あと、もう相手も技を分かってますので、今度金丸先生が背負投をかけるというのは相手もわかってると思います。ですと、防御としてはもちろん、体重・重心を少し後ろに相手としては、いかないように、こういう形で、ですし、

前に持っていかれないようにという形が起こります。こうした時になかなかこれで背負投で投げるのも難しいんですけれども、じゃあ同じモーションで今度は小内刈。

相手が後ろに重心をかけていますので、それに合わせてこうした対になる技ですね。対になる技を持っていると非常に効果的、今見ていただいてわかると思うんですけども効果的です。

あとよく多いのが内股。これが非常に長谷川先生が内股が非常に使える選手ですと、金丸先生としては腰を落として腰を切ります。

でこれも後ろに体重がかかってますね。でこれでいったら、このままだとなかなかかからないというと、谷落。後ろにかかっているので、こういう形。

もう一つやりますと、相四つで大外刈をかけます。でもこのままだとかかるので、長谷川先生は足をちょっと下げながら、体重を後ろに。

ここで大外刈がなかなか遠いので支釣込足。

こうした形が対になる技として使ったりします。あと先ほども少し(申し上げた)ミス(マッチ)の仕方だと、高低差ですね。だから、先ほどの一本背負投でも、背負投でもいいのですが、高い背負投、一本背負投

こういう形で通常…ですけれども、これも相手わかっているのでもちろん腰をちょっと下げてですね、落として。来る時に重心を下に後ろもありますし、下にも下げられる。

ここでなかなかこう厳しいので一気に、一気に低く

というような高低差を使ったりもしたりします。それから阿部選手なんかのように本当に、非常に、兄妹ともに瞬発力、スピードがありますので、そうした場合ですと、相手がする前にもう、技を、先に組んですぐ技をかけたりというところにもつながりますので、組み際の技とかにもなったりするんですけども両襟からの袖釣込腰。いきなりこう持って、一気にもうここで

相手がもう何か反応…という前に先に入られているので、その状態で技をかけられてしまう、というところにつながってしまいますので、それだけのスピードがあればいいのですけれど、もちろんお互いにそれなりの選手がやりあっている場合ですと、そこまでスピードがなければ止めたりブロックしたりできるんですけども、それを上回る瞬発力等がある場合はそうした形で一気にやってしまうというところにも。

Q:今の技の場合、白は両袖を持っていましたが、相手の動きを封じ込める意図もあるのでしょうか?

そうですね、今の状態ですと長谷川先生、持てていないんですよね。もちろんここ何とかしようとしているところわかってるのでここで、だいたいそういったさっきのような袖釣込腰が来るって分かってるんですけれども、来るなって思ってるところにもう入ってきているので、この状態で感じながら、そういったようなところにもつながったりします。

なので如何に相手に反応をさせるかですね。重心を動かすか。もうちょっとマニアックな状態ですと、先ほどのこういう形で、ケンカ四つでですね。で長谷川先生が奥襟を叩いて寄せている形なんですね。

もちろん引き手は持ってますけども、なかなか、この状態だと背負投に入りづらいな…でもここで、ねじ込んで…の…背負投。

Q:今のと通常の背負投との相違点をご説明いただけますか?

肘は普通は畳んで反対側に、背負投っていうのは入れるんですけども、この状態ですと入れないので、そこで少しここのところに、ほんのちょっと間合いを如何に作るかなんですけども、釣り手のところですね。金丸先生は少しここが作れさえすればねじ込んで、

逆にそこが間合いが詰まって投げる形になったり。そうしたところの何を、間合いを使ったり、相手の反応、リアクションを使ったり、高低差を使ったり…というようなところですね、それから一番の基本はやはり重心をいかに動かすかっていうところにもなりますので、今これ止まってやってますけども、お互いに組合いながらも、柔道は見てもらうとわかるのですけれど、動いてるんですよね。

その場で止まってしまうともう、止まったところかけると大体なかなか厳しいです。相手も分かってるので、止まってるところから技を掛け合ってもブロックされてしまうので、如何にそうしない。お互いこう組み手争いをしながらも、動かしていくかっていうようなところにつながっていきます。

で、動くってことは重心が動いている、その中でその重心を如何にコントロールするかっていうところですので、なので長谷川先生が上からさっきのように(間合いを)埋めてもらったりした時に、金丸先生このままだと、さっきの形ならできますけれども、このままだとなかなかかけれないので、如何に動きながら少し釣り手をこう動かしながらずらしながら、

こういう形で自分の間合いを作り合うか?というところで、これも組み手争いに繋がっていくんですけども

Q:引き手や釣り手を使って間合いをコントロールするだけではなく、自分の体を動かすことで間合いを調整するのですね?

はい。そういう中でいつがチャンスか…っていうのを図り合いながら技をかけていく。

Q:そうなると「今だ!」と思ってから技に入るまでの反応時間が重要になりそうですね?

なので、例えば本当に最後お互い分かり合っている選手同士のトップ選手のところに何か新しい技なんかがあった場合ですと、そうしたヤマが張ってる中でこう来るなと思うところを意表を突かれてっていうようなこともできれば、ほんとそういったところができれば非常にまた効果的だなと。

柔道編⑤「相手の重心の動かし方とは?」

お互い組み合って、がっしり組み合ってしまうと動きが止まってしまうんですね。これだと重心が動かない。なかなか動きづらい。で、ここをもう投げるというのはなかなか難しい、これはもう防御の仕方も分かっているので、このまま長谷川先生が例えば何か技をかけたとしても金丸先生は止めれるんですよね、

どこを止めればかからないかっていうのはわかっているんですけれども、このまま直接に入れないのでその前に如何に入るタイミングを作るか、場面を作るかというところで体を使いながら、でこうした場合右手の釣り手なんかをうまく動かしながらですね、こう相手をこれで重心をコントロールしますね。

前に煽ったり、振ったり。てなると今度は長谷川先生がコントロールしようとしている引き手の抑えも効かないんですね。そして重心が動いているのでチャンスも生まれるので、こうしたところに技をかけにいくというところになります。

なので組んだなと思っても止まってないですね。重量級なんかでグッとこう捕まえてっていう柔道ももちろん多いんですけれども、一般的にはこうしたところで如何に相手の重心をコントロールするか、というところが組手争いと合わせて通常行われているところになります。

なのでよく言われる日本柔道の非常に強さの秘訣のところでもあります、如何に手首をうまく使うかというところで

今パッと見ていただいても、柔道やってる人なんかですとわかるんですけども、非常にうまく手首を使っているんですね。固めてないんで止まってないですしこのスナップをよく使うというような言われ方をするんですけども、うまくこういう形で、これで攻撃にもつながってきますし、今度逆に相手が来るときも、ここで手首を使って止めたりできるんですね。

ここの攻防を如何にやっているかというところも柔道を見るポイントの一つに面白いところだと思います。

Q:相手の重心を動かすのに「頭をコントロールすること」は重要なのでしょうか?

はい。頭が大きく揺らぐっていうことはバランスが非常に大きく崩れることにつながるので。今もう少し、今のような動きをしてもらっても長谷川先生はこうなってしまうとより動くんですね。

でも長谷川先生も柔道もちろんずっとされてますので、そうされないために普通の動きをしてもらっていいですか?

動かそうとしてもお互い、見てわかってもらえると思うんですけども頭はほとんど動いてないですね。通常これなんですけれども、ここをいかに崩すかというところで…例えば、大外刈なんかが多いんですけども、大外刈でいかに相手の頭をコントロールするか、そういうところの一つに、例えば下から顎を突いての大外刈ですね。下から顎を突いて、

こうやると後ろに重心が、頭が動いてますので。

それから今度は奥襟を持っての大外刈も、奥を持って肘の内側で

これ重量級の選手なんか多いんですけども、如何に相手の顎を上げて重心を後ろにしてやるかですね。

あと金丸先生の得意な小内刈も。顎をこうして相手の顎先に、顎を突きながらの小内刈。

でやると、なんとか頑張ろうと、顎を下げて頑張ろうとしても上がってしまうので重心が後ろに行ってしまう。ですので頭をコントロールするというのは柔道でも非常に大きいところになりまして、その一つが奥襟なんかで組んで、奥襟とか間合いを詰めて、そうした形のコントロールをここの力でコントロールして、さっきのリアクションであったり、あまり相手が頭上げられませんので少しやっぱりバランスがあまりいい状況ではないですよね。

こういったところを作っていくというところにもつながっていきます。

Q:相手の重心を動かすのに、その他のやり方があれば教えていただけますか?

こうした形で前後だけでなく、円運動とかですね。

よく言うんですけど回しながら、自分の体の回旋を使ったり、というところで、技をかけたりというところもつながります。

結構多いのは、海外の選手に多いのは前後ですね、前後の押し合い。先ほど言ったようなこの押し合いの中でやり合う、見てもわかるように力が非常に入り合っているような形が多いんですけどもそれをやってしまうと、少し力が弱い選手だとその押し合いですとやっぱり押されてしまったりですね。グッとこう行こうとしても、グーってこう、でこのまま場外に出てしまうと場外指導を取られてしまいますし、

で、この押されるのが嫌なんで、押し返そうとしたところを先ほどのリアクションで、

うまく使って技に入られたりするんですね、相手が押し返してきたところに…というところにつながったりするんですけども、なのでそうならないようにというか、そこをまた違う形でグッと。まっすぐ押してきている選手をちょっと左右に散らしてやるような形、円を使っているような形でいくと直線では技の力が加わりませんので、そういうの使いながら技に入ってくるっていうのも一つのやり方なんですね。

Q:相手の力を真正面で受けず、横に流す(ベクトルをずらす)ということでしょうか?

そうです。こういったところもよくちょっと「まっすぐ下がるな」というので「横に少しずらせ」とかよくコーチなんかが言ったりするんですけど、

Q:そう対応するのは相手の圧力が強い時ですか?

はい、圧力をまっすぐ受けてしまうとやはり力勝負になってしまいますので、そうならないために、それでさっきのような手を使ったり手首を使ったり、それからずらして、自分の体捌きで、体を、少しまっすぐ来てるのをずらしてやるような形でやって、言われたようにベクトルをずらしてということが方法になります。

おまけ:実は重心のコントロールについて話していた時に、山田さんがこうおっしゃっていました。

(山田)ですのでお互いが今柔道をやっているので、非常にこうあれなんですけども、このただの手首の使い方一つで大きく、多分(柔道を)されてない方なんかは崩れると思いますので、そこをまたいかにバランスが崩れるかというところなんかも面白いところだと思います。

そこで…柔道は高校の授業以来の私が金丸先生と組ませていただいたら、こんな感じになりました。

(山田)前後に煽ったりしたら

(所長)ありがとうございます…すげー

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