YouTubeチャンネルにアップロードした「バレーボール観るなら、メンタルを見る!」③ー1から5の統合版「サーブ」です。
バレーボール編②では、バレーボールにおけるメンタルの重要性について学びました。
今回も、全日本男子バレーボールチーム監督や(公財)日本バレーボール協会の女子強化委員長などを歴任され、現在(撮影時)は大同生命SV.LEAGUE WOMENに所属するPFUブルーキャッツ石川かほくのGMでいらっしゃる寺廻太さんにバレーボールのサーブについて伺いました。
ぜひ観戦の際に参考にしていただければと思います。
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パート③−1 サーブの狙い目(前編)
Q:サーブの狙い目について教えていただけますか?
ただ単に打つサーブなんて全くないんで。基本的にここに(向けて)打ち出して(相手を)こうしたいっていう意思で(サーブを)打つわけです。それだけでまず(相手のレセプションを)崩す確率が変わってくる。
もちろんサーブの強弱、前後の揺さぶりによって(レセプションの)返球率っていうのは変わってくるんでしょうけど。基本的にはサーブレシーブ、レセプションの苦手な選手を(サーブで)狙うっていうのはもうこれは、もう大前提ですよ。

誰が(レセプションの)返球率がいいのか悪いのか。どこのポジションの時に(返球率が)いいのか悪いのか。例えばレフト側にいる、真ん中にいる、ライトにいる。それまで全部まずデータをしっかりまとめて、(サーブの)ターゲットを決める。
それでターゲットに対してどういうサーブを打つのか。前後に(揺さぶるサーブを)打つのか。左右に(揺さぶるサーブを)打つのか。それを決めて(サーブの)セッティングに入る。だからこのサーブは、例えばバックライトのあの選手を狙って、前に落とすサーブで崩していくのか、それとも(サーブを)強く打ってともかく相手にプレッシャーをかける。
だからいろんな方法論っていうのは、日々の練習の中でショートサーブを打つ。ここに狙って(サーブを)打つっていうのはやってますから。ターゲットを決めてそこに(サーブを)しっかり打ち出す。(ターゲットを)狙っていくっていうのが基本です。基本的には。もうそれ以上でもそれ以外でもないんじゃないかな。

Q:ある特定の選手がそのセットでサーブを打つ場合、相手はいつも同じローテーションなのですね?
基本的には。だからもう自分がサーブを打つ時には、もうデータでポジションでこいつがいるっていうのはわかるんですよ。で(サーブで)ここ狙おうねって。でその時に自分でサーブ(を打ちに)行ったらもうターゲットは決まってますから、基本的にはそのターゲットに(サーブを)打ち出すわけですよ。
でずーっと基本的には(同じターゲットに)打ち出すんですよ。で(相手のレセプションが)崩れないと。今日は崩れんぞと。そうするとベンチからターゲットを変えなさいとか(指示が出る)。
例えばずーっとその選手を(ターゲットにサーブを)打つふりをしてこっちにショート(サーブ)を打つとか。でそれは練習の中でいろんなバリエーションで(サーブを打つ)練習をしてるので。そのチョイスを最終的にサーバーがやっていくっていうのが基本的な、あの…なんていうのかな。V(リーグ所属)のチームのやってるサーブですね。まぁ世界的にもそうなんだけど。

基本的にターゲットを決めて(サーブを)どう打ち出すか。ジャンプサーブだったらちょっとシュート回転で打つのか、ストレートに打つのか、ハーフ(の力)で打つのか、っていうのを決めてから打ち出すんです。決めてから(サーブを)打ち出して、それが思い通りのところに行って、相手(のレセプション)が崩れたら(サーブは成功)っていうことですよね。
Q:相手の弱いところを狙う理由はAパスを減らすことですか?
そういうことです。
パート③−2 サーブの狙い目(後編)
であとはパスが(Sに)返っても。S1の方向にサーブを打つ。そうするとSはここに出てるわけですよね。ということはこういう風に返球が入るんですよ。こっちから(ボールが)来るわけじゃないですか。

こっちから来るボールに対して、(レセプションが)Aパスになっても(得点の)パーセンテージが上がらないローテーションっていうのがデータで出てきたりするんですよ。(レセプションがうまくSに)返っても。
という時はミーティングでこっち狙え。とにかくこっち狙えって(指示を出す)。(Aパスが)返ってもいいからこっち狙え(って指示を出す)。でそれで(サーブの効果の)パーセンテージが上がらなくても勝てる試合が出てくる。

ここのところに(サーブを)打ってると、(Aパスで)返球しているわりに全然向こうのサイドアウト率が悪いんだよねっていうのがずっとデータを積み重ねていくと明らかに見えるっていう時。それ結構イレギュラーですよ、それは。で反対に(そのように)試合でやってると、いやうまくいかなくて、向こうの攻撃(が)どんどん決まるからっていったら(サーブの)ターゲットを変えるとか。
いろんな方法があるんですよ。
であとは(相手の)前衛のパスヒッター、アウト(サイド)ヒッターの後ろとか、前後を(サーブで)狙って、パスをして(からアタックを)打ちに入らせてプレッシャーをかける。パスヒッターの前後を狙うと後ろを狙ったらそれから早く入ってくれなきゃいけないからハードワークしなきゃいけない。前(をサーブで)狙ったら前に行ってそれから下がんなきゃいけない。

だからそういうプレッシャーをかけるとか。だから相手が(崩れて)うちに有利になるように(サーブを)打つのが基本的にはサーバーの役目ですよね。(サービス)エースを狙う以外は。(サービス)エースを狙うっていうのも結構ありますんで今。ジャンプサーブで(サービスエースを狙う)。
そういう(サービスエースを狙う)時はミスを恐れずに(サーブを)打ってるんだと思うんですよ。まあそれ以外でフローター(サーブ)だとかジャンピングサーブで八分くらいで打つんだったらそういう相手の弱いところとか、そういうのを狙うのがまあ(サーブの)鉄則でしょうね。それ以外(を狙うこと)はあんまりないでしょうね。
だから基本的には相手の弱いところ(をサーブで狙う)。であとはパスヒッターの(そのパスヒッターが)前衛の時に相手にプレッシャーをかけるっていう。これがオーソドックスな(サーブの)狙い方ですね。
パート③−3 サーブを受けるとき
Q:相手のサーブに対して考えることは何ですか?
大体、大体パスヒッターの前衛(の選手)を(サーブでは)狙ってますよね。なのでリベロ(を)あまり狙うっていうのはあんまりないんで。
ジャンプサーブが主流なんで、(今の)男子バレーは。だからそうなると3枚(の選手)で(サーブを)取るから。女子も3人で取る。基本的にはまあ4人で(サーブを)取ることはほとんどないですよ。

よっぽど西田(有志選手)みたいな、(サーブのスピードが)速い時は、ここにもう一人オポ(ジットの選手)が入ったりして、(選手の)間に抜けてくるサーブを防ぐために、ジャンプサーブは4人(がレセプションに)入るパターンもありますけど。これはあんまり、滅多にないですね。

基本的にはジャンプサーブは3人(でレセプションをする)。フローターサーブは2人で対応したり、すごい速いサーブは3人で対応したり、その都度違ってくる。女子の場合はフローター(サーブ)も3人で取るケースがどこのチームも多いです。その守備範囲が男子に比べて狭いので。
Q:レセプションに入るのは誰ですか?
基本的にはアウト(サイドヒッター=OH)の人が2人入って(もう一人は)リベロ(L)が入ります。オポ(ジット)は(レセプションを)しない人が多いので。バック(後衛)だったらここにいたりここにいたり。
だから(2人のOHのうち)どっちかが前衛じゃないですか。だからどっちかが前衛ならどっちかの前衛に(サーブで)狙う。でここ(前)に狙う(とレセプションの後に)下がって打ちにいく(必要が生じる)。でここ(後ろ)狙う(長い距離を動いて打ちに)いく(必要が生じる)っていうことですよね。前衛のパスヒッターが狙われるというのはそういうことですね。

だから反対にこっち(の選手)とこっち(の選手)が確率的にこっちの(選手の)方が全然。(例えば)こっち(の選手の返球率が)6割5分、こっちは5割しか(セッターに)返んないっていったら、こっち(の選手)を狙う場合ももちろん、もちろんあります。
でもLを狙うっていうのはあんまりないですね。でもLのところに(サーブが)行ったら(相手が)崩れる。今日は確率いいねっていったらLを(サーブで)狙うこともあります。
Q:レセプションの時のリベロの役割はどう考えていますか?
Lは基本的に基本的にですよ。守備範囲を広くやっぱり持ってきますので。例えばこれ(の選手)がバック(後衛)。こっち(の選手)が前衛だったら、こいつ(前衛の選手)をカバーするためにこう、ちょっとこう こっちに寄り気味。これを、この人を、正面だけ(のサーブのみ)に取らすような形にしたりっていうのがLの役割なんで。

ちょっと(相手は)こいつを(サーブの)ターゲットにしたんだけど、この辺(にサーブが)きたらこいつがいたりするっていうことで、Lが(サーブを)取るっていう形は多いと思います。
でもこいつが前(衛)でも(レセプションが)上手いんだったら。ちゃんとそれ(=レセプション)を対応できるのだったら一番いいんですよ。でもなるだけ(この選手に)プレッシャーをかけないように、Lを(OH側に)寄せておいて(コート幅を)3分割っていうよりも、いわゆるちょっと(Lを)寄せておいて、こいつ(OH)の負担を軽くするっていうのは多いですよね。
パート③−4 セッターのレセプション
Q:セッターがレセプションをした時にはトスをリベロが上げるという約束事があるように感じるのですがいかがですか?
前はねミドル(ブロッカー=MB)が(2段トスを)上げてたりしたんですよ。セッター(S)がここにきた時にリベロ(L)にあげるんじゃなくて、こっち(MB)にあげるケースがあったんですよ昔。

でLってアンダー(ハンドパス)でも上手い子が多いんですよ。だからそのLでしっかりいいトスを上げてっていうのが僕はコンセプトだと思います。
ここ(MB)にあげてもいいんです。ここにあげた方が本来であれば高いところでも(ボールを)取れるし、下手すると(MBはアタックを)打てるし。
だからLがそうやって(Sのレセプションを)取るケースが多いっていうのは、Lがすごくボールコントロールする子が多いっていうのが要因にあると思いますね。
Q:リベロがトスを上げる時にはレフトに上げるという例が多いと感じますがいかがですか?
いやどっち(に上げるの)でもいいんです。バックアタックでもいいし。まあ(レフトに上げることが)多いですけどね。日本の場合はですね。
ちょっとネットの近くに(ボールを)置いておいてリバウンド取ったりするっていうのも結構見られたりね。そういうチームの中で約束事もあるのかもしれない。(チーム内の)決まり事がね。
まあ一般論としては基本的にやっぱりしっかり2段トス、(トスが)ちょっと離れたところから上がる時は、やっぱり正確にアタッカーが打ちやすいところに上げるということ(が基本)じゃないですかね。
Q:パリオリンピックでの男子日本代表では意図的にネットの近くに2段トスをあげている機会もあったのではありませんか?
うーん(トスが)ネットに近いと(アタッカーは)打つのは難しいですよ。打つのは難しいのを承知で(日本の)ナショナルチームの男子はやってるだけで、やっぱり(2段トスはアタッカーが)打てるところに、ちょっと(ネットから)離して上げた方がいいと思いますね。
Q:そうすると男子日本代表ではスパイクを打って決めることよりも次に繋ぐという決め事があったということでしょうか?
いや(無理して)打っても決まらないから。シャットアウトされたり、ワンタッチ取られちゃうんで。それだったら自チーム(にボールを)持ってきて、もっといい状態で(攻撃を)やることをチョイスした方がいいんじゃないっていう選択をしたんだと思います。これは僕の見解だから。

パート③−5 サーブの駆け引き
Q:サーブでの駆け引きで「ボールの速度の緩急」以外ではどのような考え方がありますか?
であと誰を狙うか、(選手の)間を狙うとか。まあ考えられることはそれくらいだと思いますね。
Q:レセプションが上手くない選手を狙うのがセオリーですよね?
そうですね。(サーブが上手く返る)確率の低い選手を狙いますね、基本的には。
Q:選手の間を狙う場合の意図は何なのでしょうか?
やっぱり(選手の)間っていうのは、ジャンプサーブをする場合だったら。(選手の)間を狙うことによって、やっぱりどうしてもどっち(の選手)が(サーブを)取るのっていう状況になるので。(選手の)正面に行くと(サーブが)強くても(レセプションを)上げられるんですよ。だから(サーブでは)間を狙って。

間を狙って、こういう空間のところに(サーブが)行ったときに、やっぱりサーブポイントが取れてるっていう(ことになる)。
Q:選手の一瞬の判断の遅れを誘うわけですね?
そうですね。そうですね。あとは、まあミドル(ブロッカー=MB)がここにいるので。まあここの、こういうところとか、こういうところを(サーブで)狙って(相手の)クイックをなくしておいて、ブロック(の狙い目)を絞るとか。もちろんこれ(MB)がいいパスをして、そのまま(攻撃に)入ればクイック(攻撃)に入れるんですけど。

MBって基本的に。基本的にですよ、サーブレシーブをあんまりやる機会がないんですよね。ほとんど後ろ(後衛)に行ったらリベロ(L)と交代しますので。だからその(MBが)苦手なところに(サーブを)打つことによって、やっぱりパスもAパスっていう状況が減ってくる。でやっぱりこれ(MBのクイック攻撃)が使えなかったらサイドに(相手の攻撃の選択肢が)絞られてくるとか。だから色々ですよね。
反対に、セッター(S)がここにいますよね。でこのSはライト側からパスされるボールがあんまり得意じゃないっていう選手のデータによってわかる時があるんですよ。そうするとこっち(右サイド)にいいレシーバーがいても、こっち(右サイド)を狙うっていうケースもあるんです。
だからそれはもう作戦で、もうそういうのは(試合前に)全部決めてあるんですよね。あとブラン・ジャパンとか、今の男子バレーの兆候は繊細なバレーをし始めたし。
※フィリップ・ブラン氏:パリオリンピックで全日本男子バレーボールチームを率いた監督
あと欲を言えばサーブでしょうね。やっぱり、やっぱりサーブの駆け引きがまだ進歩する可能性は十分僕はあると思いますね。やっぱりもうちょっと繊細に、ここは8分くらい(の力)で(サーブを)打っておけとか。でここは確実に(サーブを相手コートに)入れておけとか。でここはいいよ。リスク(を)負ってもどれだけ勝負してもいいよっていう。そういう(サーブの)使い分けがもうちょっと繊細になされてくると、僕はもっと日本(のバレーボール)は生きてくると思いますね。
ここ西田(選手は)サーブ(で)勝負(しに)行くんだろうなって。どういうサーブ(を)打つんだろうなって思いながら(試合を)見てると、こうすごく回転をこうスライドさせるサーブを打ったり。ああなるほどねって。ああそこ(にサーブが)行ったらポイントだよねとか。

だからそういう目で見るとバレーボールってもっともっと面白くなる。男子のサーブを見ていたら、やっぱり自分の体からちょっと離れたところ(にサーブが)行ったら、上手く(レセプションをSに)返すのは難しいですよ、あれは。だから今のバレーボールで重要なのはやっぱりファーストサーブとファーストレセプション。これはものすごく大事だなって僕は思いますね。
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