YouTubeチャンネルにアップロードした「アメフト観るなら、攻守のじゃんけんを見る!」⑤ー1から3の詳細版「スペシャルチーム」です。
アメリカンフットボール編④ではディフェンス(DF)のフォーメーションや守備の考え方について教えていただきました。
アメリカンフットボール編⑤では、スペシャルチームのプレーについて、今回も桜美林大学アメリカンフットボール部「スリーネイルズクラウンズ」前監督の関口順久さんに伺いました。
パート⑤-1:パント
オフェンス(OF)が3回目の攻撃が終わった時に、ファーストダウンを取るのが難しいなというと、パントを蹴って陣地を挽回するという4回目の攻撃に出ます。
パンター(P)が入ってきて、オーソドックスなプロパントって俗に言われるフォーメーションなんですね。
NFLなんかだとロングスナップ、これ長いスナップを出すのが専門な選手がいたりもするので一応ロングスナッパー(LS)入れておきました。この選手がだいたいですね、スクリメージラインから14ヤード(から1)5ヤード(程度)下がってるPに、なるべく早いタイミングで(ボールを)出して、これをPはより遠くに(蹴って)飛ばす。
だいたいこのスクリメージラインから40ヤード以上飛ぶといいパントという風に言われていますね。
パントはですね、パントを蹴った時点でオフェンス側は攻撃権を放棄したことになります、4回目の。つまりどんなにボールが進んでもファーストダウンにはならないということですね。ボールを取ったリターナー(RT)は、タックルされるまで好きなところまで返せます。
リターンの防ぎ方
パントを蹴ったら大体ボールがあったところの、何ヤード先のこのぐらいの位置にボールを落とすよっていうのはPそれからパントチームの選手の中で決められてます。これワイドレシーバー(WR)になってますけど、これガナーっていう、本当にRT(を)タックルするのが専門の選手なんですけれども、(ボールから)だいたい40ヤード先の右側の、僕らナンバーと呼ぶんですけど、このナンバーにボールを落とすよっていうことであれば、まずはこのガナーの人たちが両サイドを囲みましょうと。
それからLSですね。安全性のためにプレーが終わったらすぐにブロックすることが禁じられてるんですね、ディフェンス(DF)の選手は。そうするとこの(ガナーとLSの)3人でだいたいこのRTを取り囲んで、他の人たちも含めて(RTを)タックルしに行きましょうというのが大体の決まってる役割になってるんですけれども。
たまにですね、やっぱりこれPがいや全然想定外のところ蹴っちゃいましたよと言うと、この人たちにしてみるとあれあれあれあれと。こっちじゃなかったんだっけって言うと、ここから行かなきゃいけないんですね。そうすると何が起こるかというと、RTのところに行くのがやっぱり遅れて、こういったビックリターンとかですね。そういったものも起こりがちになるということになります。
チームによってはこのカバーの仕方もですね、様々あるんですけれども。オーソドックスなところとしては今のようにですね。こうやってガナーと呼ばれる選手がしっかり外側をコンテインして、スナッパー(LS)の選手が前を塞いで(RTの)スピードを落としながら、みんなでタックルしていきましょうというのがパントの基本的なコンセプトです。
Q:全員の役割があらかじめ決められているのですか?
基本的には決まってます。はい。
あなたは(RTの)外側を守ってくださいね。あなたは前を塞いで(RTの)スピードを落としてくださいね。そこから出てきたところを例えばこのガード(G)に入ってた選手なんかがタックルしに行くと、タックル(T)に入ってた選手なんかがタックルしに行くとっていうようにですね。大体役割は決まってますね。はい。
パントのターゲットポイント
カバーチームの考え方としてやっぱり左右に振っていった方がカバーしやすいんですよ。
なんでかって言うと(ボールを)ここに落としますよって決めてると、こっちのリターンってそんなに怖くないですよね。だからどっちかっていうと重視するべきはこっちなんですよね。
広いサイドから行って狭いサイドに(RTを追い込む)、でタックルするとっていうことをしたりするので、どっちかっていうと(パントを)真ん中に蹴るっていうよりもどっちかというと端っこの方に蹴る。場合によってはこのままボールが出ちゃっても、そこから(相手の)OF(が)始まるので、それでも構わないよということがあります。はい。
パントの高さ
ものすごい高いパントを蹴ると、こういうRTに対してカバーする人たちの時間をたくさん作れるんですよね。ライナーでボールが行くと、まだカバー選手が全然行ってない時にボールが先にRTに行ってしまえば、(ボールを)取ってしまえば、やっぱりそれはリターンできるチャンスがたくさん出てくるので、Pとしてはなるべく高いパント、これハングタイムっていうんですけど、時間をなるべく空中にある時間を長くとって、かつ距離が出て、かつ(ボールを落とす)正確性というところは問われるところですね。
自陣深いポジションでのパント
例えば5ヤードより内側っていうのが1個ポイントなんですよ。(パントを蹴るのに)だいたい15ヤード下がるので。エンドゾーンは10ヤードじゃないですか。
だから5ヤードから後ろでパントがあると、十分な距離が取れないので、Pとしては早く蹴りたいと(思う)。(Pが)早く蹴ると、今度はRTに早くボールが行くことになるんですよね。そうするとロングリターンされちゃいますよと。で最悪例えば、ここで言うと、リターン(を)ここまでされちゃうと、もうOF(が)止まっても、もうフィールドゴール(FG)が蹴られちゃうなということになるので、5ヤード未満でパントの時は大体ダイレクトで(外に)蹴り出します。
パントリターンタッチダウンもしくはすごいいいところで相手のOFを進められるっていう、(相手にOFを)始められるっていうリスクを避けるために多少短くても早く(パントを)蹴って、外に蹴り出しましょうということにしてるチームは多いと思いますね。
ディフェンス(レシービングチーム)の考え方
Q:リターンする側の考え方を教えていただけますか?
えっとですね。まずリターンチームの一番のポイントは、ボールを確保するということだと思いますね。これファンブルするとターンオーバーに当然なっちゃうので、まずはしっかりとボールを確保すると。だから近くにタックルされるだろうという(相手の)選手がいるんであれば、フェアキャッチと言ってタックルされない、とにかくボールをまず確保するだけでリターンしませんよっていうルールもあるので、フェアキャッチしたりするっていうのがまず第一の目標です。
プラスやっぱり常にビッグプレーの可能性というのがパントにはあるので、そこをどれだけ狙っていくかということですね。
まず一番いいのはパント(を)ブロックしちゃうんですね。こういった足の速い選手が来て、Pがボールを持ってるうちにタックルしたり、蹴ったボールをこうブロックしたりすることを一つの大きな役割になっていて、これができると敵陣からオフェンス始められたりとか、よりエンドゾーンに近い位置からOF(を)始められるということで有効なプレーという風になりますね。
逆に言うとこれ(ボール)がPから蹴ってRTに行った時に、じゃあこっちにリターンすることに決めとこうぜと。そうするとこういう選手たちは必ずこうやってタックルしにくるんで。こうですよね。じゃあこの選手たちはどうするかっていうと、(RTが)リターンしやすいような壁を作ると。まあこういったリターンのテクニックもありますよということですね。
でこれ結構見てて、この面白さはですね。もう1人後ろに1人しか置かないで、それ以外が全員突っ込んで明らかにブロックしに行ってますっていうシチュエーションがあったりとか、今度は左右1人だけラッシュして、こいつ(らは)全員今度はRTのためのブロッカーになっているよということもあるんですね。
シチュエーションにもよるし、点差にもよるし、それからこのチームのキックの考え方にもよるし。よりリターンを選択したり、よりブロックを選択したり、チームの特徴としてですね、出てくることが多いです。
パート⑤-2:キックオフ
じゃあ次にキックオフ(KO)ですね。KOカバー、それからKOリターンという形になります。
KOはカレッジ、それから日本のルールでは35ヤードからのキックになりますね。NFLだけ30ヤードからボールを蹴るんですけども、だいたい35ヤードから蹴ります。キッカー(K)が(ボールを)蹴ってですね、なるべく遠くに蹴り込むと。
リターンチームが走るところを決めてですね、カバーしてくる選手に対して、そこにリターナー(RT)が行きやすいような形でいかにブロックしていくかというのが一番のキックの醍醐味ですね。でキックはやっぱりスピードも出るし、スペシャルチーム全般ではあるんですけど、(KOは)ボールが一番動くプレーなので、そういった意味では非常に醍醐味が高いかなぁと思っています。
大きく分けるとリターナーが真ん中をリターンするようなセンターリターン。それからこうリターンの人たちも壁を作ってですね、こういう形で(RTに)なるべくサイドを走らせるというサイドリターンと、だいたいこの2つがオーソドックスな形であるかなという風に思っています。
Q:キックオフの時、選手はどのようにプレーしているのですか?
全速力で走ってきた人たちを下がって、どこでブロックするか。例えば35ヤードなのか、40ヤードなのかみたいなのが決まっていて、その他の人たちは、じゃあ自分は誰をブロックする、僕は誰をブロックする、俺は誰をブロックするみたいな形で決めて、RTの行く走路を作ると。
で大体リターンチームの方は、大体これ(左の)12345、(右の)12345みたいな形で(各選手に)番号をつけてですね。俺は3番ブロックする、俺は4番、俺は漏れてきたやつみたいな形で、誰をブロックするかっていうアサインメントが決まってるんです。
それに対してカバーチームは何をしてくるかというと、原則はカバーチームはカバーチーム(の選手)同士ですね、距離を保ってカバーしていくんですけど、場合によってはリターンチームを混乱させるために、1番目と2番目の選手たちがクロスしたりとか。
あとはいろんな役割ですね。例えばあなたはまずしっかり突っ込んで、まず壁をですね壊す役割だったりとか、外側をしっかり守りましょうとかですね。そういったところに出てきたRTをあなたたちがタックルしてくださいとかですね。であなたたちは(RTが)仮に抜けてきちゃった時のセーフティーとして、まあ一発タッチダウン(TD)はないようにしましょうとかですね。
まあカバーチームはカバーチームでそれぞれ役割が決まってるので、それに準じてしっかりカバーを行うと。
キックオフの「成否」
蹴ったボールがエンドゾーンに行くと、これタッチバックってなって、ここからリターンしてもいいんですけど、多くの場合はエンドゾーン、特に奥の方でRTがボールを持つと、これリターン(を)放棄するんですね。リターンを放棄するとオフェンス(OF)は25ヤードから(OFを)始められます。
なのでカバーチームとしては25ヤードよりも奥で(RTを)止められたらカバーチームのナイスカバーです。逆にリターンするのであれば25ヤード以上リターン(を)しようっていうのが、やっぱりリターンチームの成功・不成功の一つの線引きのポイントになるかなと思います。
オンサイドキック
じゃあ第4クォーター(Q)残り2分、7点差ですよと。で相手もタイムアウトありますと。いうことでいくとやっぱり素直に(相手に)ボールを渡してしまうと、多分時間使われてまあおそらく逆転できないなということがあるんであれば、このKOのボールを取りに行こうという発想になるんですね。
ボールがあったところ、35ヤードですね。ここから10ヤード、まあ現実的に言うと45ヤードなんですけど、ここをボールが越えるとフリーボール。つまりどっちが取ってもいいんですね。
概してですね、この前列に並んでいる人達っていうのは、比較的体が大きくて何でかって言うと体の大きい人たちをブロックしたりしなきゃいけないから。(相手は)スピードも出てて。そうするとある程度走れる体の大きい人って、比較的ボールの扱いに慣れてないんですね。
こういう人たちのところに例えばKが不規則なボール転がして。アメリカフットボールも楕円形なので、必ずこうボールの行く方法が一定じゃないというところを使って、最低でも10ヤードを越えて、この足の速い人たちに(ボールを)取らせると。これが結構オンサイドキックと言われるですね。
当然ながらもう残り時間が少ないと、リターンチームの方もオンサイドキックやられるなと思うので、(選手を)みんな上げてくるんですね、こうやって。でRTだけ一番後ろにいて、こんな隊形でよく守ってくることもある。まあ残り時間少ない時のKO、また逆転がかかりそうな点差の時っていうのはこれは一つのポイントになると思いますね。
ただ(戦力的に)負けてるチームが勝とうとすると、予期しないところ。例えば試合の一番最初とか、それから一番先に、先に点を取った直後とか。勢いをこっちに持ってくるつもりでオンサイドキックやってくることもあります。
こういったようにですね、オンサイド(キックを)やるだろうという時にやるのはそんなにリターンチームは難しくないんですけど、全くこうオンサイド(キック)に来ると思ってないところで、やっぱりオンサイド(キックを)やられると、さっきも言ったようになかなかボール使うのが苦手な選手が多かったりするので、そこの人たちが弾いちゃったりとか、逆にこう当たって弾いてそのままカバーチームがボール(を)もらっちゃうとかですね。こういったことも多々あります。
試合終了間際ですね。得点が詰めたい時にもやるし、もしくはそういったこう相手を驚かせて、モメンタムをこっちに持ってくるという意味でもやるというのはサプライズのオンサイドキック。まあオンサイドキック全般的にはそんなところですね。
パート⑤-3:フィールドゴール(FG)
オフェンス(OF)の攻撃の種類として、フィールドゴール(FG)の話をしたいと思います。
FGはキッカー(K)が蹴ったボールがこのポールですね。間を通ると、タッチダウン(TD)の後の場合だと1点、普通のダウンのプレーの場合だと3点が加点されるというプレーですね。
なので例えば敵陣20ヤード、25ヤード(辺りまで)入っていくと、OFはフォースダウンになったらパントを蹴らないで、FGにして3点取りに行くっていうのが通常の攻撃の手段という風になります。ロングスナッパー(LS)が出したボールを、ホルダー(H)が立ててそれをKが蹴ると。でこの間を通すと。っていうプレイになりますね。
ここが大体ですね7ヤードくらいなんですね、LSからHまでの距離が。7ヤードをスナップ出してHが立てて、キック(を)蹴るまでが1.5秒以内っていうのがスタンダードな数字になってます。1.5秒以内にできると非常に優秀と。
ディフェンス(DF)の選手っていうのはこんな感じでいてですね。まあこういったところからラッシュしてくる選手がある程度早めに来れても、まあ1.5秒以内に蹴っていれば間に合わないだろうという風に言われています。DFの選手たちは1.5秒以内でブロックするために、なるべく最短距離。なるべく最短距離を行って、やっぱり「ハンズ・アップ」手を上げて、蹴られたボールをブロックしようとすると。
でFGなんですけどこのブロックするOFの選手たちがこの1.5秒の時間をいかに作り出すかということが、FGのこのユニットの大きな目的になるので、とにかく大きい選手を前に並べてます。で見ておいて欲しいのはこの(選手同士の)間ですね、ギャップって言うんですけど。(通常の)OFだとこの間が2ヤードとか開いてたりするんですけど、FGの場合はゼロです。ガード(G)の選手の外の足にタックル(T)の選手の中の足がクロスしてたりですね。ここをぴったりくっついてると、一つの分厚い壁になってKが蹴る時間を1.5秒以上しっかり作りましょう、というのがコンセプトになります。
なのでこの人たちはもう恐ろしくスピードで、パワーでラッシュしてくるんですね。そうすると例えばですけど、Hがボールを持って、ここからピューって出てですね。こういった選手にパスを投げるみたいなトリックプレーをやったりもします。
この人が走ったりとかっていうプレーもあったりするので、そういうのに備えるためにこういうところに選手を置いておいてですね。しっかりあなたこういう人たちがパスコース出る時には、ちゃんとついてくるんですよみたいなことを役割として渡したりもすると。
(FGの)95%以上は普通蹴ります。だけどやっぱり20回とか30回に1回ぐらい、例えばボールが乱れたりとか、いやいやいやこいつらこうやって思いっきりラッシュしてくるから、ちょっとその裏にパス投げてやろうとか、こういったですね。スペシャルプレーを用意しているチームは少なくないです。成功すればまたファーストダウンでOF(を)もう1回できたりとか。
意外とスーパーボウルとかですね。ボウルゲームとか特別な試合の時には必ず、プロでも学生でもこういったスペシャルプレーを1つや2つ必ずどのチームを用意してます。使うか使わないかは、その使えるシチュエーションがくれば使うし。
ただ決まった時は一気に試合のモメンタムですね。やっぱりその(スペシャルプレーを)決めたチームに行くっていう意味では、FGのプレーというのは見ていてもすごく楽しいプレーの1つかなという風に思います。
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